大阪市の小学6年女児(12)を誘拐したとして、未成年者誘拐容疑で栃木県小山市の自称派遣社員伊藤仁士容疑者(35)が逮捕された。24日に家宅捜索が行われた容疑者の自宅周辺を取材すると、「真面目」で「気遣いのできる子」といった容疑者の人柄に驚きの声が聞かれた。多くの報道陣が集まり、普段は静かな住宅街に緊張が走った。

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伊藤容疑者が住む小山市内の自宅は新興住宅地にある。事件が急展開した一夜明け、静かな住宅地が物々しい雰囲気に包まれた。

近隣住民によると、家族は母親、弟、妹の3人。幼いころ、父親を事故で亡くした。約30年前、3人で引っ越してきたという。地元の中学、宇都宮市内の高校を卒業後、アルバイトを転々としていたようだ。

伊藤容疑者は約10年前、栃木県内の自動車教習所でアルバイトし、総務課送迎係を担当。週6日、コースの維持管理を含めた雑用を行っていた。教習所の社長は「実直できちょうめん、信頼できる人間だった。遅刻もなく社内トラブルもなかった。正社員になることも勧めたが、約1年弱で辞めた。なぜ、あのようなことに…」とつぶやいた。

近隣住民によると、現在は自宅に容疑者がほぼ1人暮らしの状態。母親は容疑者の祖母が以前住んでいた斜め前の一戸建てで生活し、自宅と行き来していたようだ。親族は「(容疑者は)アルバイトを転々として、食いつないでいたので、母親が食事や洗濯だけでなく、生活費などのサポートしていたのでは」と推測。50代主婦は「真面目で頭がよさそうな印象。自宅前に置かれた自転車をよくいじっていた」と明かした。

60代主婦は、息子が容疑者と中学時代に同じ剣道部だったことから容疑者と顔見知りだった。「彼が26、27歳の時、私ががんになったのですが、『体にいいから』とお茶ときのこを買って持ってきてくれました。困っている人を見捨てられない、気遣いのできる子でした」と明かした。「礼儀正しく頭も良く、文武両道でした。『お母さんを助けなきゃ』と言っていたやさしい子。とても凶悪犯とは思えない」と、驚いた。【近藤由美子】