昨年1月、千葉県野田市の小学4年生栗原心愛(みあ)さん(当時10)が虐待され、死亡した事件で、傷害致死罪などに問われた父親の勇一郎被告(42)の裁判員裁判の初公判が21日、千葉地裁(前田巌裁判長)で開かれた。

勇一郎被告は「未来のみーちゃんの姿を見ることをできなくしてしまった。みーちゃん、本当にごめんなさい」と謝罪したが、一部を除いて否認し、争う構えを見せた。

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黒のスーツに青のネクタイ、頭を丸刈りにした勇一郎被告は起訴状が朗読されると、罪状認否の前に「一言言ってよろしいでしょうか。私の気持ちです」とメモを取りだした。「娘にしてしまったことは、しつけの範囲を超えたものでした。未来のみーちゃんの姿を見ることをできなくしてしまった。謝ることしかできません。みーちゃん、本当にごめんなさい」。読み上げると、涙をぬぐった。

傷害致死、暴行、強要など起訴事実は6件に上る。裁判長が1つ1つ、「違っているところはありますか」と尋ねると、勇一郎被告は「間違いありません」「罪については争いません」と繰り返した。しかし「飢餓状態にしたり、ストレスを与えて衰弱させたことは1度もありません。立たせ続けたり、冷水シャワーをかけたりしたことはありません」など一部を否定。19年1月5日、心愛さんを脱衣所で立たせ続けた強要事件を除く5つは争う姿勢を見せた。

検察側は冒頭陳述で<1>勇一郎被告は自分の思い通りにならないと気が済まない性格で<2>別居・離婚で8年間離れていた心愛さんを次女が誕生すると疎ましく思うようになり<3>ストレスのはけ口として繰り返し虐待した<4>日常的、継続的な虐待の末に死亡させた、と事件の全体像を描いた。これに対し、弁護側が「結果的に行き過ぎたが、あくまで教育で自分なりに家族が幸せになることを考えていた」と主張すると、勇一郎被告はハンカチを握りしめ、何度も目や鼻にあてた。

入廷時、退廷時に裁判員、検察官だけでなく傍聴席にも深々と頭を下げた。「娘のためにできることは推測、先入観でなく、事実により真実を明らかにすることだと思います」と話したが、その主張は心愛さんや妻が訴えてきたことはウソというものだった。

裁判は今後、勇一郎被告の母親、傷害ほう助で昨年6月に懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年の判決が確定した妻、心愛さんの小学校の担任、児童相談所の担当職員らの証人尋問の後、3月4~6日、被告人質問を行い、9日に結審する。判決は3月19日の予定。【中嶋文明】