首都圏は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、週末の28日から外出自粛要請下に突入した。東京都や隣接する首都圏の各県は、オーバーシュート(爆発的な感染者急増)を防ぐために不要不急の外出自粛を求めた。

人通りが消えて閑散となった厳戒ムードの首都をルポする。

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春休みの土曜日を迎えて厳戒ムードと、異様な光景が首都に広がった。小池百合子都知事は緊急事態宣言の1歩手前であることを強調し、「この土日は自宅でお過ごしください」と呼びかけた。小池会見の翌日、都庁のお膝元である新宿を歩いた。建設会社勤務の男性(50代)は「うちの業界は年度末の繁忙期で週末返上です。パソコンはデスクトップなので持ち帰れず、持ち出し禁止の資料もあってテレワークは無理です」と、オフィスへ急いだ。

JR新宿駅・新南口には日本最大のバスターミナル「バスタ新宿」がある。1日1500便以上の高速バスが39都府県へ発着するが閑散としていた。愛知県の男性(20代)は4月1日から東京勤務となり、転居手続きで上京。「昨夜のバスに乗りたかったけどチケットが取れなかった。みんな東京脱出?」と言い残して、乗客がまばらなバスに乗り込んだ。

JR新宿駅南口から新宿駅東口のアルタ前に移動したが、人通りが少ないために5分足らずで到着した。大型スクリーンを見上げる広場は平日でも待ち合わせ場所としてにぎわうが人影はなく、ハトだけだった。

日本一の繁華街である歌舞伎町へ向かうと、にぎわいを取り戻した。若い世代が多く、マスクの着用率は低い。20代の専門学校生は「手洗いすれば大丈夫。店がどこもすいている」と笑った。緊張感はなかった。

新宿から地下鉄で銀座へ向かった。車内はガラガラだが、座席には並んで座らずに1人分を空けた状態が多かった。あえて座らない人もいる。感染リスクに対する敏感な空気が満ちていた。だが、自粛だらけの閉塞(へいそく)感からか、先週末の3連休は桜の開花もあって外出する人が急増した。新型コロナウイルスは感染から発症まで約2週間といわれ、今後、さらなる感染者の増加も予想される。外出自粛要請が前倒しされていれば…。要請だけの難しさを痛感した沈黙の首都だった。【大上悟】