新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、感染防止対策を新装備した「新型コロナウイルス対策仕様」のタクシーが登場した。業界大手・日の丸交通(東京・文京区)は、乗客が座る後部座席と、運転席を透明な塩化ビニール製カーテンで遮断した車両を導入した。後部座席と運転席を分離することで飛沫(ひまつ)感染などを防止するもので乗客、乗務員にも大好評となっている。

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飛沫感染などから、乗客と乗務員を守る新型コロナウイルスの感染防止策を新たに導入したタクシーが都内でデビューした。日の丸交通では乗客が座る後部座席と、運転席のある前席を特注の塩化ビニール製「セパレーターカーテン」で仕切った対策車両を3月24日から本格的に運行している。

カーテンの中央部には料金の支払いや釣り銭を受け取るために密閉型の小窓があり、素材は抗菌仕様となっている。カーテン越しに交通系ICカードなどによる精算もできる。装備車両の女性ドライバーは「お客様にも乗務員にとっても安心安全です」と大歓迎だった。同社は感染防止対策に約500万円を投じているが、リピーターや予約指名が増えているという。

同社では1月下旬から乗務員に検温、マスク着用、手洗い、車内の消毒、換気などを義務づけている。だが、タクシーの車内空間は狭く、濃厚接触のリスクがあり、対策強化が急務だった。同社では「まずはお客様の安心安全、そして乗務員の健康も守るために」とカーテン製造会社に特注し、製品化した。

装備されるのは東京五輪・パラリンピックへ向けてトヨタが、タクシー専用に開発した「ジャパン(JPN)タクシー」で日の丸交通では保有する約600台のタクシーの中でJPNタクシーが約400台を占める。3月上旬にテスト車両を運行させ、「お客様の評判も上々で乗務員なども非常に好意的だった」ことから、富田和孝社長がゴーサインを出し、3日時点で同社の対策車両は150台に増えた。12日までにJPNタクシーすべてにセパレーターカーテンを装備する計画だ。同社では、製造会社から塩化ビニールや型紙、部品などを取り寄せて、1日に入社したばかりの新入社員30人が総出で完成品作りに奮闘中だという。

一方、セパレーターカーテンの製造会社には、早くも全国のタクシー会社から問い合わせが入っている。感染拡大防止へ向けた「日の丸発」の「新型コロナウイルス対策仕様」のタクシーが全国に拡大しそうだ。

◆ジャパンタクシー(JPN TAXI) 東京五輪・パラリンピックへ向けてトヨタが、車いすに乗ったままで利用可能なタクシー専用車として開発。17年10月にデビューした。全高1・75メートルのトールワゴンで5ナンバーサイズで小回りが利き、狭い道にも適している。乗車定員は運転手を含めて5人。乗降する後席左側のドアは大開口の電動スライド式、低床フラットフロアで乗り降りがしやすい。着脱式の専用スロープで車いすのまま乗降が可能。荷室には大型スーツケース2つを並べて収容できる。都内を中心に新規に採用するタクシー会社が増加。

◆タクシーの新型コロナウイルス感染防止対策 主要タクシー会社では車両の出庫、帰庫時に体温チェック、マスク着用、手洗い、うがいの励行などを義務付けている。また、車内の入念な消毒作業や、窓を開けるなど車内換気などの対策に努めている。乗務員の濃厚接触リスクを回避するために、乗客の助手席利用を断るタクシーもある。