アムールトラの「センイチ」(雄、17歳)をコロナから守れ-。新型コロナウイルスの影響で休園していた天王寺動物園(大阪市天王寺区)が26日、約1カ半ぶりに営業を再開した。

同園ではヒトからヒトへの感染予防のため、獣舎の手すりやガラスの消毒や清掃を徹底。来園者同士で間隔を空けるよう注意書きを掲示した。一方でヒトから動物への対策も徹底した。 4月上旬、米ニューヨーク市のブロンクス動物園のマレートラ「ナディア」(雌、4歳)が新型コロナウイルスに感染したことが判明。飼育員を介して感染したとみられ、同園のアムールトラやライオンの計6頭が乾いたせきが続き、食欲減退の症状が出た。

この日、天王寺動物園では動物へのコロナ対策を徹底し、再開を迎えた。とくにネコ科のトラやライオン、その中でも雄のトラとしては国内最高齢のセンイチには気を使う。

同園の獣医師、西岡真さん(51)は「飼育員同士の密を避け、動物の食事の際には細心の注意を払っています」。鶏肉などのエサを与える際は飼育員は手袋、マスク着用。通常は2人で行うエサを小分けする作業も1人で行う。飼育員の時差出勤、昼食は集まって食べないなど、できる限りの感染防止対策をとっている。

この日、17歳の誕生日を迎えたセンイチ。いつもなら特製の肉などのバースデープレゼントがあるが、園内のすべてのイベントは中止した。センイチは、03年5月26日に多摩動物公園(東京)で生まれた。同年10月に天王寺動物園に“婿入り”。その年、開幕から絶好調だったプロ野球・阪神タイガースを率いる故星野仙一監督にちなみ、センイチと命名された。その年、阪神は首位独走で18年ぶりのセ・リーグ優勝を成し遂げた。

センイチの大ファンで週に1回は来園するという大阪市市内の女性会社員(50)は「ブロンクスの動物園のニュースを聞いて、心配だった。センイチは高齢だし、とにかく元気でよかった」とホッとした表情を見せた。

トラの動物園での平均寿命は20年ほどだが、この日のセンイチの悠然とたたずむ姿は迫力満点。飼育員らに守られながら、“猛虎魂”は健在だ。【松浦隆司】