名馬のふるさと、北海道浦河町にも5月上旬になって、ようやく桜の季節が到来した。帯広から車で約2時間。途中まだ雪の残る山道を抜け、うらかわ優駿ビレッジアエルに到着した。例年この時期になると桜祭りが開催され、ライトアップされた桜の下では、のべ1万人が春を楽しむ。しかし今年はすべてのイベントが中止となった。それでもそんな人間たちの動きは関係なく、馬たちはいつもどおり元気に歩き回り、おいしそうに草を食べ、寝転がる。その姿に元気をもらった。

今年はもうひとつ浦河町が桜シーズンの目玉を準備していた。それが「おばけ桜」。JRAの敷地を見渡すことのできる高台にあり樹齢推定80年以上で樹高は16メートル、幹周は道内最大の4・8メートルにもなるエゾヤマザクラだ。この初公開を準備していたのだがこれも中止となった。商工観光課の真田一哉さんは「桜を期待されていた方もいたのですが(来年に向けて)より一層整備します。楽しみにしていて下さい」と前を向く。

春の風が吹き抜けるこの桜の下で胸いっぱい空気を吸い込んだ。目の前には北海道の大地が広がる。思わず誰かに伝えたいと思える景色だ。来年以降はここに人々の笑顔が広がる。その光景を想像しながら帰路についた。【河野匠】

<撮影データ>5月7日午前10時20分撮影 キヤノン「EOS 1DX Mark2」 100-400ミリ(焦点距離110ミリ) ISO感度250 シャッタースピード640分の1 絞り5・6