北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさん(55)の父親で、拉致被害者家族会の代表を務めた横田滋(よこた・しげる)さんが5日午後2時57分、老衰のため死去した。87歳だった。1977年(昭52)11月、当時中学1年のめぐみさんは新潟市の中学から帰宅途中に北朝鮮の工作員に拉致された。以来43年、滋さんは再会を願い続けてきたが、かなわなかった。葬儀・告別式は近親者のみで行う。後日、お別れの会を予定している。

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横田滋さん、早紀江さんご夫妻は、取材の際、めぐみさんを「めぐみちゃん」と、呼んでいた。13歳で北朝鮮に拉致された愛娘。すでに40年以上の時が過ぎたが、どれだけ年月が過ぎても、夫妻にとってはあの時の「めぐみちゃん」のままなのだろう。そう思うと、胸が張り裂けそうだった。

めぐみさんの姿は見えないまま、めぐみさんの娘がいることが明らかになった。滋さんは14年3月、早紀江さんとモンゴル・ウランバートルで、娘キム・ウンギョンさんとその娘、夫妻にとってひ孫と面会した。当時、拉致問題の幕引きに利用されかねない面会ともいわれたが、帰国後の会見で、滋さんはめぐみさんの面影を残す孫、ひ孫との面会を「充実した3日間だった」と笑顔で振り返った。

「我々もこういう年齢になった。いつ死ぬか分からない。会いたい気持ちは昔からあった」。問題が解決されないまま時間が過ぎることへの思いも口にした。 面会の場でもめぐみさんの情報は得られなかった。「会えるようになったら、ディズニーランドみたいなところに連れて行きたい」。こんな「普通」の願いも阻まれたまま、滋さんは旅立った。【中山知子】