安倍晋三首相は5日夜、横田滋さんの死去を受けて取材に応じ、滋さんが願い続けた横田めぐみさんの帰国に向けて「全力を尽くしてきたが、実現できなかったことは断腸の思いだ。本当に申し訳ない」と、唇をかんだ。02年10月、拉致被害者5人が帰国して家族との再会を果たした時を振り返り「写真を撮っていた滋さんの目から涙が流れていたことを、今でも思い出す」と述べた。

首相は第1次政権時から、北朝鮮による拉致問題解決を自身の政治的使命と位置づけてきたが、現在も拉致問題、日朝関係ともに進展を見いだせていないのが現実だ。滋さんは拉致問題解決へ、長年先頭に立って活動してきた「象徴のような人」(関係者)だ。そんな滋さんの存命中に問題を解決できなかったことは、安倍政権に大きな打撃となるのは間違いない。

首相はこの日「あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動しなければ」とも述べたが、被害者家族の高齢化は進んでおり、時間は残されていない。