渡辺が、藤井棋聖の「引き立て役」になってしまった。初顔合わせとなった19年2月の朝日杯決勝、藤井に敗れ、連覇を許した。その2カ月後、平成を振り返る将棋のイベントの新時代の将棋界を占うトークショーの中で、タイトル戦に出てくるであろう史上最年少プロを意識し「引き立て役になりたくない」と公言した。しかし、初防衛を目指した棋聖戦でタイトルを明け渡し、2冠(棋王・王将)に後退した。

連敗した第2局とよく似た形で、逆王手を狙った。「7筋から9筋の攻防を見ていた。逆側(2~4筋)から揺さぶられて形勢を損ねた」と振り返る。注目度の高い一戦にやりがいを感じていた。シリーズ4局を通じ、「中~終盤の競った将棋で負けている。仕方がない結果」と受け止めた。

年下との頂上対決で初めての敗退。「すごい人が出てきたな」と、最後は勝者をたたえていた。