安倍晋三首相は17日、東京・信濃町の慶応大学病院で医師の診察を受けた。6月13日に受けた人間ドックの「追加検診」という。

同日夕、病院から私邸に戻ったが、永田町では一時、「入院情報」も飛び交った。最近、健康不安説が根強くささやかれていたタイミングでの病院受診。政治家の健康問題は政治生命に影響しかねない。新型コロナウイルス収束の見通しも立たない中、首相の体力はもつのか。受診は波紋を広げている。

   ◇   ◇   ◇

安倍首相は午前10時半ごろ、車で慶応大病院に入り、7時間半滞在。午後6時すぎに帰宅した。体調を問う報道陣の質問に「お疲れさま」とだけ、応じた。

早朝から、病院受診や入院の情報が飛び交った。同病院は首相のかかりつけ。第1次安倍政権時の07年9月、持病の潰瘍性大腸炎の悪化で退陣表明した後も同病院に入院、治療した。第2次政権では毎年、人間ドックを受診。今年は6月13日に受診したばかりで、わずか2カ月後の「追加の検診」となった。

最近、首相は健康不安説が指摘されてきた。今月はじめ、首相が先月吐血したと写真週刊誌が報道。菅義偉官房長官は会見で否定したが、最近の首相は表情に覇気がなく、足取りの重さも指摘されていた。

政治家にとって健康問題を表に出したくないのが本音で、総理大臣ならなおさらだ。自民党の関係者は「健康不安説がある中、日帰りでも受診せざるを得なかった。体調万全とは言えないのでは」と述べた。

首相は例年、8月は地元山口に帰省後、山梨県内の別荘で夏休みを過ごしてきた。今年は東京都の小池百合子知事が地方への移動自粛を要請しており、首相も公務以外は私邸に滞在する日々が続いている。

持病が一因となり、1年で第1次政権退陣に追い込まれた首相は、第2次政権で健康に細心の注意を払ってきた。しかし今年は、新型コロナウイルス対応でまとまった休みはほとんどない。野党の臨時国会召集要求に応じないのも体力の不安が大きいとされる。首相と面会した側近の甘利明・自民党税制調査会長は16日、民放番組で「強制休み」の必要性を主張。自民党内でも「体力の限界なのでは」と不安の声が上がる。

首相は24日、連続在職日数が2799日と、大おじの佐藤栄作元首相を抜き歴代単独1位になる。一方で、自民党総裁の任期は来年9月まで約1年。「ポスト安倍」選びも始まった中で表面化した首相の健康問題は、今後の政治日程に影響する可能性もある。