ジャーナリストの伊藤詩織さん(31)が20日、15年4月に元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(54)から性的暴行を受けたと17年に実名を公表して明らかにした後、インターネット上で事実に基づかない誹謗(ひぼう)中傷の投稿により精神的苦痛を受けたとして、自民党の杉田水脈衆院議員(53)を相手に、220万円の損害賠償などを請求する訴訟を東京地裁に起こした。また、工学者で株式会社Daisy代表取締役の大沢昇平氏(32)に対しても、110万円の損害賠償などを請求する訴訟を起こした。この日午前、訴状を提出した。

伊藤さんは米国の大学に在籍した13年12月に、アルバイト先のバーで山口氏と知り合った。正社員としての就職先を求めるメールを送信したことをきっかけに、帰国した15年4月3日に山口氏と会食した際、意識を失い、ホテルで暴行を受けたと主張。準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出した。同6月には山口氏の逮捕状が発行されたが、逮捕直前に取り消されたという。

一方、山口氏は合意に基づく性行為だと反論した。東京地検は16年7月、嫌疑不十分で不起訴とした。伊藤さんは、翌17年5月に不起訴不当を訴えたが、東京第6検察審査会も同9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当と議決した。

伊藤さんは、16年7月の刑事裁判で山口氏が嫌疑十分で不起訴処分とされ、翌17年9月の検察審査会でも不起訴相当とされたことを受け、同年9月に山口氏を相手に民事裁判を起こした。19年12月18日の判決で、東京地裁は「虚偽の申告をする動機がない」と主張を認め、著書の出版も、自らの体験を公表し社会で議論されることで性犯罪被害者を取り巻く法的、社会的状況の改善につながる公益目的だと評価した。

一方、山口氏の行為について地裁は「酩酊(めいてい)状態で意識がなくなった伊藤さんに意思に反して性交渉を行った」と認定。著書で名誉を傷つけられたと1億3000万円の損害賠償を求めた反訴も棄却し、伊藤さんが勝訴した。山口氏は20年1月6日に、判決を不服として東京高裁に控訴した。