プロ野球広島の元投手、池ノ内亮介さん(31)が現在、大阪府警寝屋川署管轄の交番で巡査長として勤務している。

「困っている人を助け『市民、府民のため』というところがある。野球もチームのため、ファンのために頑張る。『のため』は似ている。できないことを補って助け合って、ひとつのことを成し遂げるのは遠からず似ている」と話す。仕事内容は「事故もあれば落とし物届けとか、110番があればどこにでもかけつける。書類も書いたりする」と多忙な日々を過ごしている。

池ノ内さんは10年ドラフト育成2位で広島に入団、14年7月に中継ぎとして1軍初登板。「緊張の中でなんとか抑えようという気持ちだった」。1回を無失点。1軍での登板はその年の2試合だけで、15年に戦力外通告を受けた。「一生懸命やっていたけどうまくいかないことも多かった。でもやっぱり充実した5年間だった」と振り返る。

16年にスポーツや語学などの技能を評価する大阪府警の採用枠「自己推薦方式」の試験を受験した。「今までやってきた野球を評価してくれるのはありがたい。無駄にならないのはうれしい気持ちがあった」。

プロ野球時、苦手だったクイックやけん制を得意と言えるまでに克服した。「地道にやっていったらなんとかなるって分かった」。警察官の仕事の中にも不得意なものはあるが「苦手が得意になったということもある。難しいこともコツコツやっていけば成長できるんじゃないか」と考えている。プロでの経験を生かして、第2の人生も進んでいく。【星名希実】

 

○…池ノ内さんはもちろん野球のニュースもチェックしている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、プロ野球は開幕延期となり、無観客試合も行った。池ノ内さんは「お客さんの声援が力になるのはあるけれど、音がない分、ボールとバットが当たる音とかもすごく聞こえる。野球をやっていた人間からしたらおもしろい部分」と話した。春夏ともに中止になった高校野球には「甲子園は野球をやっている子どもたちの憧れ。なんとかできたらよかったなぁ、という思いはあります」と元球児の目線で語った。

 

◆池ノ内亮介(いけのうち・りょうすけ)1988年(昭63)11月22日、三重県生まれ。7歳のとき、知り合いに誘われて野球を始めた。中京高では外野手、中京学院大で投手に転向。10年ドラフト育成2位で広島入団。13年オフに支配下登録。14年7月15日のDeNA戦で中継ぎで1軍初登板。15年に戦力外を受けて引退。現役時代は175センチ、74キロ。右投げ右打ち。