聖火ランナーとして宮崎・日南市を26日に走った木藤亮太さん(46)の祖母高木とみ子さんが出走前日の25日に息をひきとった。

92歳だった。木島さんは「聖火ランを見てもらえなかったのは残念ですが、大往生です」と静かに話した。

聖火ランナーを辞退することも考えたが、家族に「あなたは行ってきて」と宮崎に足を向けた。福岡県在住だったが、8年前に日南市油津(あぶらつ)に家族で移住した。商店街再生マネジャーとして、全国公募333人の中から採用された。

「ネコすら歩かないシャッター街」などと評されていたが、着任から4年で新たに28の店舗と事業所を誘致した。木藤さんも1970年代に人気で閉店した「麦藁帽子」という喫茶店を改装し「ABURATSU COFFEE」として復活させて店主となった。

「福岡から来たよそもんだけど、借金して喫茶店のオーナーになって『こいつは本物だ』と商店街のみなさんに感じていただけたようでした。経営コンサルタント会社の社員でしたが、出張とかではなく現地に居住してじっくり根付いて作り上げていくは始めてでした。地域と一体になることが大事なんです」。

亡き祖母とみ子さんは豆腐専門店を経営していた。根っからの商売人で「私は祖母の血を引き継いだのかもしれません」と木藤さんは聖火リレーを終えてつぶやいた。油津商店街に顔を出して、すぐに祖母の待つ福岡に戻った。「聖火リレーのことをちゃんと報告します」と通夜の遺影の前に聖火をともしたトーチを置いた。【寺沢卓】

 

◆26日の聖火リレー 1日目の最終区となった宮崎市から「海→山」へと移動して最終区のえびの市へ。金メダルの期待のかかる男子柔道井上康生監督(42)がアンカーを務めた。

27日は鹿児島県入りする。志布志市からスタートして第3区奄美市では元ザ・コブラツイスターズのボーカル川畑アキラ(52)はトーチを掲げる。最終区の鹿児島市では12年ロンドン五輪で銅メダルを獲得した女子バレーボールの迫田さおりさん(33)、08年北京五輪で競泳男子400メートルメドレーリレー銅メダリストでタレント宮下純一(37)が走る。