今年1月に退任したトランプ前米大統領が、在任中に新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と繰り返し呼んだとして中国系米国人の公民権団体から訴えられたことが明らかになった。芸能情報サイトTMZが報じたもので、トランプ氏の発言が米国内でのアジア系への憎悪犯罪(ヘイトクライム)をあおったと主張し、精神的苦痛並びに名誉毀損(きそん)で2290万ドルの損害賠償を求めているという。この金額は米国内に住むすべてのアジア系と太平洋諸島系米国人1人当たり1ドルの賠償で算出したもので、賠償金はアジア系と太平洋諸島系米国人の貢献と歴史を紹介する博物館の建設に使われるという。

訴状で原告側は、ウイルスが実際にどこで発生したのか完全に明らかになっていない段階から「中国ウイルス」と表現していたと主張し、支持者受けを狙ったものだと批判しているとTMZは伝えている。

トランプ氏は在任中、コロナの発生源は中国であるとして「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」と繰り返し呼んでいた他、選挙集会で「カンフル(中国の武術カンフーとフルー=インフルエンザを組み合わせた)」と表現したこともある。米国では新型コロナウイルスの感染が始まった昨年3月以降、アジア系住民を標的としたヘイトクライムが急増しており、今年に入ってからもジョージア州アトランタのマッサージ店でアジア系女性6人が銃撃される事件も起きている。トランプ氏の一連の発言がアジア系への差別や暴力を助長していると批判の声が出ており、各地で抗議デモも起きていた。

トランプ氏側から、現時点で訴訟に対する反論やコメントは出されていない。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)