里見香奈女流4冠(29)が2日、福岡県飯塚市で行われた第32期女流王位戦5番勝負第3局で、タイトル戦初登場の山根ことみ女流二段(23)を下した。

3連勝で防衛し、3年連続7期目の女流王位を獲得した。同時にタイトル獲得通算44期(別表)とし、2009年(平21)11月に清水市代女流七段(52)が達成した通算43期獲得を抜いて、単独トップとなった。

「手探りで対局を進めた」という山根とのシリーズは、ふたを開ければ、経験値や読みの深さでストレート勝ち。戦前は意識していなかった歴代1位の座も手にして、「大変光栄なこと」と笑顔を見せた。

名前に入った将棋の駒「香」のように、小さいころから思いも一直線。将棋を始めて間もない00年11月、小3の時に地元島根県出雲市で行われた「将棋の日」のイベントで、ゲストの羽生善治九段(50)らに「どうしたら将棋が強くなりますか?」と尋ね回った。

「詰め将棋を毎日解くといいよ」。高橋和女流三段(引退=44)から言われ、指切りした。04年10月にプロになってからも、移動の夜行バスの中で解き続けた。

マイナビ女子オープンの創設パーティー(07年秋)では、司会を務めた大ファンのタレントつるの剛士に、参加した全女流棋士でただ1人、記念撮影を求めた。

同年の女流王将戦挑戦者決定トーナメントでは、決勝まで勝ち進んだ。清水に敗れて挑戦権を逃した。「いつか清水さんに挑戦して、必ずタイトルを取ります」と宣言した。翌08年11月の倉敷藤花戦でタイトル戦初挑戦を決め、清水からタイトルを初めて奪った。「今でも印象に残っています」という。

デビューから足掛け約16年8カ月、初タイトルから12年7カ月、将棋一筋に進み、「清水超え」を実現させた。「数字に執着はない。目の前の対局で全力を尽くしたい」。歴史を塗り替えても姿勢は謙虚だった。【赤塚辰浩】