札幌市街地にクマが出没し、4人がケガをする騒動となった。18日午前6時前、東区で高齢の男女2人が襲われ、その後、40代男性と男性自衛隊員1人もけがを負った。同区内の陸上自衛隊丘珠駐屯地近くの茂みに潜んでいたクマは、地元猟友会により駆除されたが、住宅街にまさかの出没だった。専門家の北海道立総合研究機構・間野勉専門研究主幹は、クマの市街地出現に警鐘を鳴らした。

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18日午前6時前、札幌市東区北19条東16丁目付近の路上で、クマが近くに住む会社員小笠原敏師(としのり)さん(75)と80代女性を襲った。さらに同区内の陸上自衛隊丘珠駐屯地に逃げ込むまでに、歩いていた40代男性と男性自衛隊員1人にもけがを負わせた。小笠原さんと80代女性、自衛隊員はいずれも軽傷で、40代男性は肋骨(ろっこつ)を折るなどして重傷とみられるが、命に別条はない。

クマはその後、駐屯地近くの茂みで、午前11時15分ごろに地元猟友会により駆除された。体長約2メートルの雄のヒグマとみられる。小笠原さんらが襲われた現場はJR札幌駅から北東に約3キロの住宅街で、付近には小学校や保育園もある。札幌市内では過去に、中央区の円山、南区の滝野、真駒内など山林に近い地域で目撃情報が寄せられるケースはあるが、市街地での騒動は珍しい。

小笠原さんは、逃げて転んだ際に背中に爪を立てられたといい「あんなに足が速いと思わなかった。恐ろしく、心臓が飛び出るかと思った」と話した。駆除される前には、イオン元町札幌店の駐車場で目撃されるなど、人間の生活圏で動き回っていたことで、東区の小学校9校、北区の小・中学校1校ずつが臨時休校となった。

近くに住む無職原馨さん(75)は庭の畑を踏み荒らすクマを窓越しに目撃し「突き破って家に入ってくるかと思った。足がすくんだ」と声を震わせた。道警によると、同日未明から、札幌市東区の路上にクマが出たと110番が相次いでいた。

<北海道内の主なクマ騒動>

◆93年10月 上磯町(現北斗市)の農道で、くま狩りをしていたハンターがヒグマに襲われ、顔などを骨折する重傷を負った。西300メートルに観光地トラピスト修道院がある現場だった。

◆03年11月 苫小牧市の住宅街に体長2メートル前後のクマが出没。苫小牧署が22台のパトカー、ヘリコプター1機で巡回。市内東部の小学校7校、中学校5校が始業時間を遅らせ、帰宅時は集団下校を実施した。

◆18年8月 置戸町で、ジョギング中の男性が近くの木から下りてくるクマ1頭を目撃。近くのパークゴルフ場では大会参加者約200人が一時避難した。

◆20年12月 美唄市の美唄国設スキー場のゲレンデにクマの親子が出没。利用客約80人が避難した。市担当者は「冬眠していると思っていたのでびっくり」。