自民党は26日、総裁選挙管理委員会で、菅義偉首相の総裁任期満了(9月30日)に伴う総裁選日程を「9月17日告示、29日投開票」に決定した。菅首相は、すでに再選へ向けて出馬の考えを示している。この日、出馬を正式表明した岸田文雄前政調会長は菅首相との対決姿勢を鮮明にした。現職に岸田氏が挑む構図が軸となるが、下村博文政調会長、高市早苗前総務相も出馬に意欲を示している。

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新型コロナウイルスの感染は急拡大を続け、菅政権の支持率の急降下で党内には「菅降ろし」のムードが広がる中で次期総理を決める総裁選が幕を開ける。昨年9月の総裁選は党員・党友票を除く、簡略投票だったが、今回は国会議員票の383票(26日時点)と、党員・党友票の383票の合計766票で争うフルスペックで行われ、過半数獲得で当選が決定する。

再選を目指す菅首相は、昨年の総裁選で真っ先に支持を表明した二階俊博幹事長から、二階派を挙げた支持を得た。安倍晋三前首相や森山裕国対委員長らも支持を表明している。

対立候補となる岸田氏は「政治の根幹である国民の信頼が崩れている」と、対決姿勢を明らかにした。後手後手、小出しの対応で批判を受ける菅首相に対し、「国民の納得感と、最悪を想定した危機感の必要性を前提としながら現状把握に基づいて先手先手でしっかり対応する」と、積極姿勢をアピールした。

岸田氏はロックダウン(都市封鎖)導入に否定的な菅首相に対し、「人流の抑制について法改正も必要」と違いを際立たせた。会見は約2時間のロングランで、ネットからの質疑にも応じるなど説明力不足を指摘され、会見時間の短い菅首相とは好対照を演出した。

一方で岸田氏は指摘されてきた発信力の弱さをのぞかせた。前日25日、感染対策の効果で「明かりは、はっきりと見え始めています」と楽観的に語った菅首相の受け止めについて「どういった意図で発言されたか承知していない」と、明確な回答を避けるなど、切れ味に欠ける場面もあった。

下村氏は所属する細田派が出身母体の安倍前首相を都内の自邸に訪ね、協力要請した。高市氏は「今日がキックオフだ。精いっぱい多くの同志に政策を伝え、賛同をお願いしたい」と、出馬に前向きな姿勢を変えなかった。【大上悟】