東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、東京地裁は2日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(90)に禁錮5年(求刑禁錮7年)の実刑判決を言い渡した。

起訴状によると、飯塚被告は19年4月19日に都道を走行中、車線変更の際にブレーキと間違えてアクセルを踏み続け、時速60キロから96キロまで加速して交差点に進入。松永さん母子をはねて死亡させ、9人を負傷させたとされる。

被害者参加制度を使って裁判に参加した真菜さんの夫の松永拓也さん(35)と父の上原義教さん(64)は会見を開いた。松永さんは「検察側の事実認定は全て認められ、遺族の主張も認められた。裁判官が『尊い命が奪われて、この2人(松永さん母子)が感じた恐怖心は想像しがたい、遺族の失望は想像するに余りある』と配慮の言葉を述べていただき、涙が出てしまいました」と語った

その上で、裁判長が「裁判に納得がいったなら、遺族に謝って下さい。納得できないなら2週間の間に控訴の権利があります」と言葉をかけたことについて「否認事件で、ああいうことを言うのは珍しいと聞きましたので大きいことだと思います。今回、客観的な判決が下されたことを受け、まず客観的に認められたことは被告にも受け止めて欲しい。控訴する権利は国民にありますけど、もう1度、自分自身に問いかけて欲しいという意味で、裁判官は言ったと思う。私も、そう思います」と語った。高橋正人弁護士は、裁判官が語りかけた際の飯塚被告の様子について「飯塚被告はうなずいていた。人間性に期待したい」とも語った。

松永さんは「被告人側の主張に苦しめられましたけども、私としても救われる気持ちになった。感謝しております」と、20年10月の初公判からの日々を振り返った。その上で「これで命が戻ったらどんなに良いか…むなしくなって涙が出たが、判決は前に向いていけるきっかけ。大変、つらったけれど、被害者参加制度を使って参加して良かった。一生懸命、伝えたことが裁判官に伝わった印象が持てた」と語った。

その上で「さまざまな人に支えられ生きてこられた。感謝しております。被告人に権利があり、続くか分かりませんが、どんな結果でも出来ることをやっていきたい。2人の命を無駄にしないために」と語った。