囲碁のアマチュア強豪で、子どもたちの育成機関「緑星囲碁学園」代表の菊池康郎氏が11月3日午前8時34分、老衰のため自宅で死去した。92歳だった。葬儀は6日午前、近親者のみで行われた。

菊池氏は1929年(昭4)、東京都大田区生まれ。専大卒。一般企業に勤務しながらアマチュア棋戦で活躍し、アマ本因坊戦は57年から59年まで3連覇したほか計13回優勝。92年には世界アマチュア選手権にも日本代表として5回出場し、92年の第14回には世界制覇も果たしている。

その一方で、79年に緑星囲碁学園を設立。勤務先を退社した後は、多くの有望な子どもたちの育成に専念した。82年にデビューした村松竜一八段(58)を筆頭に、青木紳一九段(56)、山下敬吾九段(43)、最後の弟子となった今年の女流本因坊戦挑戦者の星合志保三段(24)まで、多くのプロ棋士を輩出した。子どもたちの性格を的確につかみ、1人1人の個性を伸ばせるように指導していた。また、「東日本子供囲碁大会」も98年から企画、開催し、自らも「全国こども囲碁普及会」の代表を務めた。

同学園の出身者で、日本棋院常務理事の青木喜久代八段(53)は、「学園内での規律やルールには厳しかったし、私は立場が上の年長者だったこともあり、後輩の面倒をよく見るように言われていた。個人的には優しく、タイトルを獲得した時にはお祝いやねぎらいの言葉もかけてもらえた。師匠でもあり、囲碁界の父親的な存在でもありました」と、話していた。

棋聖、名人、本因坊などタイトルを計23期獲得した山下九段は、「先生のおかげで、囲碁の本当の楽しさを知ることができました。今後も先生の人まねの碁は打つな、という教えを胸に刻み、一局一局大切に打ちたいと思います」とコメントした。