将棋の史上最年少4冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖=19)が渡辺明王将(名人・棋王=37)への挑戦権を獲得した。19日午前10時から東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第71期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグで、3勝1敗で2位につける近藤誠也七段(25)を午後7時12分、91手で下した。藤井はこれでリーグ5連勝。ほかの在籍者6人が2敗以上となり、24日のリーグ最終一斉対局を待たずに、王将戦7番勝負初登場を決めた。

近藤には19年2月の順位戦C級1組9回戦で黒星を喫した。勝てばB級2組への昇級がかかった対局で敗れ、昇級がかなわずもう1年、C級1組で足踏みした。本局は、「序盤の方針がまとまらなかったが、先手2一龍(77手目)から先手3四歩(79手目)で攻めが間に合う形になったと思いました」と分析した。今期のリーグの星勘定は知っていた。「いつもと同じように」と平常心を強調した。

前期は序盤の3連敗が尾を引き、初めてリーグ陥落を経験した。前々期は同じ4勝1敗の広瀬章人八段(34)との直接対決で敗れ、挑戦権を逃した。「あまり結果が出せていなかった。自分の実力以上の成績が出せたと思います」とリーグ5連勝を振り返った。

13日には竜王を獲得して史上最年少4冠になったばかり。勢いに乗って、次のステージに上がる。渡辺王将とは昨年、今年の棋聖戦5番勝負で対戦がある。「作戦巧者で、序盤から中盤の戦略に優れている印象があります。(初めて戦う)2日制7番で深い考えに対応できればと思います」と目を向ける。

来年1月から開幕予定の頂上対決で先に4勝すれば、史上最年少での年度内5冠。将棋界では故大山康晴十五世名人、中原誠永世十段(引退)、羽生善治九段と過去3人しかいない。その前に24日の永瀬拓矢王座(29)戦で白星を挙げ、全勝でリーグを終えたい。【赤塚辰浩】