衣料品通販大手ZOZO創業者でスタートトゥデイ社長の前澤友作氏(46)らが乗り込んだ、ロシアの宇宙船ソユーズが8日午後0時38分(日本時間同4時38分)カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、約6時間後の同6時48分(同10時48分)国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングに成功した。同氏は日本人の民間人として初めてISSで12日間滞在し、20日にカザフスタンに帰還の予定。日本人の商業宇宙飛行は、90年の元TBS記者秋山豊寛氏以来31年ぶり2人目となる。

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暗黒の宇宙空間を航行したソユーズMS-20が、目前に迫るISSとのドッキングに向けたファイナルアプローチをした時だった。操縦士のアレクサンダー・ミシュルキン宇宙飛行士が地球と交信する最中に「うわぁ、やばっ。すごい…でかっ」「真下にステーションがいます」などと日本語の声が聞こえてきた。前澤氏は、関連会社役員でISS滞在の様子を撮影する平野陽三氏(36)を伴うが、前澤氏の声とみられる。

また地球から英語で「日本人の友だちは大丈夫?」と質問が飛ぶと「fine(元気)」という声も聞こえた。それも前澤氏とみられる。打ち上げ時に体重の4倍程度の重力加速度(G)4Gがかかると言われる中、満面の笑みを見せただけに、声色も躍っていた。

宇宙への旅は幼少期からの夢だった。7年前に米国の宇宙旅行代理店スペース・アドベンチャーズからオファーを受け「民間人が行けると思わなかった。『行けます!』と」と即答した。打ち上げ前日7日の会見では「遠足を控える小学生になった気持ち」と少年のように目を輝かせた。

渡航費用は公表していないが、宇宙旅行に詳しい複数の関係者によると1人あたり数十億円とも言われている。会見で子供の夢の実現か、単なる冒険か、ビジネス目的か? と聞かれると「天体を見るのが好き。ついに夢がかなうという思いでいっぱい」と答えた。

その裏には具体的な計画がある。米宇宙ベンチャー「スペースX」と契約し、23年に予定する民間人初の月周回飛行プロジェクト「dearMoon」の案内人として、一足先に宇宙を訪れ、同乗するクルーの安心感を高めたい思いがある。ISSでは自身のYouTubeチャンネルで世界中から募集したテーマを実行する「宇宙でやってほしい100のこと」を配信する。「何十年後かは、もっと行っていると思いますけど、まだまだ宇宙は簡単には行けない。1人でも多くの人が興味を持ち、宇宙をどんどん好きになって欲しい」。民間人の宇宙への扉を開きたい…その思いで、前澤氏は新たな地平を開いた。【村上幸将】

◆秋山豊寛さん宇宙飛行VTR 1990年(平2)12月2日にバイコヌール宇宙基地から日本人初、世界初のジャーナリスト宇宙飛行士としてソユーズで宇宙に飛び立った。打ち上げから約1時間43分後に「これ本番ですか? 地球は、やっぱり青かった」などと最初のリポートを行った。約49時間後の同4日には当時のソ連宇宙科学ステーション「ミール」とのドッキングに成功。カエルの無重量下運動の観察やテレビカメラでの日本列島撮影に成功し、同10日に帰還カプセルで着陸。宇宙飛行は9日間、時間は189時間54分に及んだ。

◆前澤友作(まえざわ・ゆうさく)1975年(昭50)11月22日、千葉県鎌ケ谷市生まれ。98年にスタート・トゥデイ(現ZOZO)を設立し、ファッション通販サイト「ZOZO TOWN」を開設。07年に東証マザーズ、12年に東証1部に上場。19年にヤフーとの資本業務提携を発表後、CEOを退任。スタートトゥデイを立ち上げ、13の事業を始動。約28億円を配布して前澤式ベーシックインカム社会実験を行うなど、社会課題解決に取り組む。