震度5強の揺れを9日に観測するなど、鹿児島県十島村の悪石島(あくせきじま)で頻発する地震を受け、避難を希望する住民14人が12日、村営フェリーで鹿児島市に到着した。

11日には希望者16人が奄美大島に到着しており、島の住民75人のうち30人が島外に避難した。村が用意した宿泊施設などに滞在する。

島の住民からは、不安の声が上がった。60代の女性は「小さな揺れでも震えるほど怖い。精神的に落ち着かないです」と話した。9日の地震で自宅の食器棚が開き、皿やグラスが割れたという。女性は犬のダックスフントを飼っているといい「(島外に)避難したくても、ホテルにペットを連れて行けないし、置いていくこともできない」と肩を落とした。女性の姉夫婦も牧場で黒毛和牛を飼育しており、島に残ったという。島唯一の学校で9人の児童生徒が通う、十島村立悪石島小中学校は8人の子どもが避難した。芝原寛教頭によると、滞在先での環境が整い次第、オンラインでの授業を行うという。

十島村によると、けが人は出ていない。日用品をそろえる「悪石島売店」では9日の地震で調味料などの商品が棚から落ち、店内が散乱した。島は名所である温泉の近くなど、複数の場所で崖崩れが起きており、防災無線で外出は控えるよう、アナウンスが流れた。また、地震との関連は不明だが、5日~6日にかけて一時的な断水も起きた。鹿児島市からフェリーで、各家庭2リットル6本の飲み水のほか、断水対策でトイレ用などの水が支給された。

気象庁によると、悪石島は12日も地震を観測した。4日以降、震度1以上の揺れが240回を超えた。

◆悪石島(あくせきじま) 鹿児島・十島村のトカラ列島12島のうちの1つ。鹿児島港(鹿児島市)から南に約290キロ。フェリーで10時間15分かかる。面積7・49平方キロ、人口75人(21年12月現在)。北西部に標高584メートルの「御岳(みたけ)」がそびえ、ふもとには海岸の岩間から湧き出る海中温泉がある。仮面神「ボゼ」を象徴とされる民俗信仰があり、旧暦の7月16日に「ボゼ祭り」が行われる。平家の落人伝説があり、地名の由来として「追っ手が来たがらないような名前」との説がある。