17日召集の通常国会では、昨年末の臨時国会で法改正が先送りになった「文書通信交通滞在費(文通費)」の行方が焦点の1つです。国会議員に給与にあたる歳費とは別に、毎月100万円の経費が在籍1日でも満額支給され、領収書提出や使途報告、未使用分返納などの義務がないため、税金なのにブラックボックス化。“第2の給与”とも呼ばれ問題視されながら、長く放置されてきました。昨秋の衆院選をきっかけに再び見直しの声が高まる中、文通費だけでなく、国会議員がどんな待遇を受けているのか、調べてみました。

      ◆  ◆  ◆

文通費は、国会法と歳費法で「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」と定められ支給されています。1947年(昭22)、通信費として125円の支給で始まり、名称、金額などを変えながら、93年(平5)に現在のものになりました。世間では、経費は使った分だけ領収書を提出するなどして精算します。前払いなら、余ったら返しますね。しかし文通費は、非課税で、領収書の提出、使途報告、未使用分の国庫返納などの義務はありません。拡大解釈して人件費や事務所賃料などに使う例も。社会常識とかけ離れた実態に再三、改革が求められてきましたが、国会はうやむやにしてきました。

今回は、10月31日投開票の衆院選で当選した新人、元職に10月分が満額支給されたことに、日本維新の会の新人がおかしいと声を上げました。臨時国会では、以前から使途公開している維新をはじめ野党側が<1>日割り支給、<2>使途公開、<3>未使用分の返納をセットで求めたのに対し、与党側は使途公開などを議論する時間がないとして日割り支給の先行を主張し、法改正が見送りになりました。

維新と国民民主は独自で使途公開などの対応を表明。維新はこれまで未使用分は各議員の政治団体に寄付する形でしたが、使途をより限定し、各議員が専用口座で一元管理して公開、未使用分は1年ごとに党を通じて被災地に寄付するなど透明性を高めることにしました。維新の藤田文武幹事長は「そもそも、みなさん何に使っているか出しましょうと。使途を明確化すれば、これはやりすぎとか、まさにこういう使い方だとか、いいか悪いか議論になる。法改正のため、問題提起としてやっている」と透明性が何より重要と強調。「ちゃんと使途が制限され、使い道が明確ならもらっていいし、余ったら返せばいいと思う」などと説明します。

国会議員の待遇の中にはほかにも、?が浮かぶものがあります。例えば、公設秘書給与も日割りの仕組みがありません。各会派に議員1人当たり月65万円が支給される立法事務費も、使途報告などの義務はありません。

「政治とカネ」の問題に詳しい岩井奉信(ともあき)日大名誉教授(政治学)は「文通費について、野党の主張は正論。きちんとやらないといけない。全会一致すれば1日で成立する。名目はあるが、必ずしもそういう使い方をされていない。使途公開すれば、抑止力にはなる。そもそも必要かという問題もある。交通などはほかに補助もある。ほかにも、おかしなもの、あいまいなものがいっぱいある。立法事務費も政党助成金の二重取りと言われる。本当なら全体を見直す必要がある」などと指摘しています。

与野党は今後、文通費について協議していく方針です。夏の参院選に向け、国民に対してどんな答えを出すのか、注目されます。