岩手県沿岸で捕獲されたアオウミガメの排せつ物に不織布マスクが含まれていたことを確認したと、東京農工大と東京大の研究グループが発表した。ウミガメ類のプラスチックの誤飲は以前から確認されているが、不織布マスクの報告は初めてという。研究は海洋汚染の学会誌に掲載された。

このウミガメは昨年8月に岩手県沿岸の定置網に混獲され、東京農工大の福岡拓也研究員が、排せつ物の中にマスクのようなものを発見。ポリプロピレン製不織布マスクと確認した。この地域では過去15年以上にわたり、ウミガメ類の生態調査が行われてきたが、これまでにマスクが出てきた例はなかった。ウミガメはその後、特に異常は見られず、ゴミや餌を見せた時の反応を調べる飼育実験(かみつこうとした時点でゴミを取りあげて摂食はさせない)を行った後、10月に捕獲場所周辺で放流した。

一方で研究グループは、市販されているマスクから環境ホルモンが検出されることも確認した。5社のマスクについてプラスチック添加剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)の分析を行ったところ、4社のマスクから内分泌かく乱作用が指摘されるUV329を含む、6種類の添加剤を検出。今回のウミガメの排せつ物から見つかったマスクに、同様に添加剤が含まれていたかどうかは分からないが「海洋生物がマスクを誤飲することで、プラスチックの添加剤にもさらされる可能性を示している」と指摘した。

コロナ禍で使用が急増した不織布マスクや手袋などをめぐっては、ポイ捨てなどの不適切な処理や、海洋への流出などが問題になっている。研究グループは「今回の結果は、コロナ禍における社会様式の変化が海洋生物にも影響を与え始めていることを示すもの。廃棄物管理の徹底や安全な添加剤への変更といった対策が必要」としている。