将棋界最年少の19歳6カ月で5冠となった藤井聡太新王将(竜王・王位・叡王・棋聖=19)が13日、タイトル奪取から一夜明けて東京都立川市のホテルで記者会見し「改めて王将獲得の喜びを、実感を持って感じる」と語った。

会見では驚きの語彙(ごい)力と、将棋と同様の柔軟さを披露した。対局会場となった東京都立川市「SORANO HOTEL(ソラノホテル)」の窓からは遠くに日本最高峰の富士山が見えた。

史上最年少5冠を達成し、一夜明けた現在地について「富士山で例えれば何合目まで登っているイメージか」との質問に藤井は「将棋は奥が深いゲーム。どこが頂上なのか全く見えない。いまだ頂上が見えない意味では森林限界の手前。まだまだ上の方には行けていないと思います」と答えた。

広辞苑によると、森林限界とは「高緯度地方や高山の森林生育の上限。本州中部では2400~2600メートル付近にある」。富士山の森林限界は5合目付近とされている。自らの将棋道を富士山の登山道に例え、樹林帯を抜け、2合目、3合目…。まだ森林限界の5合目付近には到達していないと表現した。

藤井は数学と地理が得意。小学校時代には家族と登山を楽しみ、小学6年のときには乗鞍岳(岐阜・長野県境、3026メートル)にも登ったこともある。登山経験があるにしても、質問に“長考”せず、即答した「森林限界」はSNS上で一時、トレンドワードのトップになった。「森林限界というワードを新王将から教わる」「こんなことを記者会見で咄嗟(とっさ)に言える19歳よ…」。自分の中で“消化”した言葉を応用できる柔軟さに感嘆する声が相次いだ。

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前人未到の全8冠制覇も視野に入ってきた。「今までと同じように実力を高めていくことを見据えて取り組んでいけたら」。22年度は5タイトル防衛戦をこなしながら、王座戦、棋王戦で挑戦者を目指す。【松浦隆司】