ウクライナ侵攻をめぐりプーチン政権による厳しい情報・言論統制下にあるロシアの国営テレビ「第1チャンネル」で14日夜、看板ニュース番組の生放送中に突然、同局の女性社員が画面に登場し反戦を訴えた。

午後9時からのニュース番組「ブレーミャ」でキャスターがニュースを読み上げていたところ、後ろに「NO WAR」などと大書した紙を掲げた女性が飛び出し「戦争をやめて!」などと繰り返し叫んだ。番組は画面を切り替えたが、その姿は約5秒間放送された。

欧米の報道によると、極めて異例の抗議行動を実行したのは、マリーナ・オフシャンニコワさん。紙には英語とロシア語で「戦争反対。戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。この人たちはみんなにうそをついている」と書かれていた。

オフシャンニコワさんはツイッターに動画も投稿。「ウクライナで起きていることは犯罪。侵略の責任はプーチン大統領にある。私の父はウクライナ人、母はロシア人だが、一度も敵対したことはない」「私は何年も第1チャンネルでクレムリンのプロパガンダを広め、画面でうそを伝えることを許してきた自分を恥じている」「この暴挙を止められるのは、私たちの力しかない」などと訴えた。

オフシャンニコワさんは拘束され、警察で取り調べを受けている。プーチン大統領は今月4日、軍に関する「偽情報」の拡散に対し最長で懲役15年を科す法案に署名。ウクライナ侵攻を「軍事作戦」と称し、「戦争」や「侵攻」などの表現を禁じた。今回も処罰される可能性がある。ロシアのペスコフ大統領報道官は15日、この抗議を「野蛮行為」と呼んで非難した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日のビデオ演説で「真実を広めることをやめないロシア人たちに感謝している。第1チャンネルのスタジオに現れた女性にもだ」と述べた。