ウトロ港からは24日早朝から漁業関係者が漁船でカズワンの捜索に加わった。

20代の漁業の男性は、仲間らとウトロ港から岬まで捜索した。男性は、海面に浮かぶ子ども用の救命胴衣や、沖に上がっていた救命浮器など、約9点の救命具を発見し回収した。男性は「初めてのことだったのでつらかった。無事でいて欲しい」と目を潤ませた。男性によると、小さな救命胴衣がチャックが開いたまま、海面に浮いていたという。

カズワンはウトロ港を出港後、約27キロ北東の「カシュニの滝」付近の海域から救助要請を出していた。捜索をしている航空自衛隊などのヘリコプターが10人を岬近くで発見した。男性によると「岬付近は潮の流れが川のように速い。荒れている日は、半日もすれば国後島の方まで行く可能性がある」と指摘した。

国土交通省によると、カズワンは21年5月、浮遊物にぶつかって乗客3人が軽傷を負う事故を起こしていた。同年6月11日にも、ウトロ港近くの浅瀬に乗り上げる座礁事故を起こしていた。漁業関係者の男性は「(現場の海域に)慣れていれば座礁や事故を何度も起こすものではない」と、知床遊覧船の運航態勢を不安視。漁業関係者の間では、「大丈夫なのか」と、カズワンを運航する知床遊覧船を心配する声もあがっていたという。

斜里町では23日未明に強風注意報が、同日朝から波浪注意報が発令され、ウトロ漁協の漁船は同日昼前に帰港していた。漁協関係者は「漁業者は何時から風が強くなるとか計算して出る。オホーツク海は10分で波の高さや潮の流れが変わってくる」。その上で「海が荒れると乗客は船酔いするし、船長が帰港の時間を見誤ったのだと思う」と話した。【沢田直人】