北海道・知床沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU 1(カズワン)」(19トン)が遭難した事故で、運航会社の「知床遊覧船」(斜里町)の桂田精一社長(58)が27日の記者会見で使った「条件付き運航」の運用や、安全管理規定の基準数値を明言できない様子から、同社の安全管理体制のずさんさを指摘する声が各所から上がった。

旅客を伴う船舶の運航会社は、海上運行法に基づいて、船を運航するための「安全管理規定」を国交省に届け出るとしており、それぞれの海での状況と航路を鑑みて、出航の限度となる風速、波高、視程(視認できる範囲)を数値化して提示するものとしている。

安全管理規定は48ページからなる「ひながた」があり、必要事項を記入する方式になっている。桂田社長が記者会見で提示した「条件付き運航」という言葉はどこにもない。

国交省海事局安全政策課では「一般論でいうなら、条件付きでの出航という概念も用語もない」と断言し「出航に関してはあくまで可否であって、事前に出航の限度なる自然環境の状況の数値を各社が出している。その数値に沿って出航するか、しないかを決定するということ」とした。出航後に荒天となり運航を中断することはあっても、中断を予定に盛り込んだ「条件付き運航」は安全管理規定には盛り込まれていない。

また、桂田社長は27日の会見の席上、知床遊覧船の出航規準について「波1メートル以上で欠航、風速8メートル以上で欠航、視界が300メートル以上ないと出航できない」と一旦は説明したものの、あらためて安全管理規定にどのように記されているかとの質問に、手元の書類の束をパラパラとめくったあとで「えー、数値は出ていない」とあるはずの数値を探せずに発言していた。【寺沢卓】