沈没した観光船カズワンが29日、カシュニの滝付近の水深120メートルの海底に沈んでいることが分かった。

海図でその付近を確認すると、急しゅんな斜面のような地形の印象だが、映像資料などを総合すると、船体は平らな場所に位置しており、切り立った崖状にはなっていない模様。沈没した船体の場所は、岸から500メートル~1キロと予想される。

水中での調査や工事に関する潜水業務に従事する「朝日海洋開発」代表取締役で水難学会副会長の安倍淳氏は「岸からはそれほど離れていませんが、ダイバーがボンベを背負って作業できる深さの限界は水深40メートル程度。船体の沈む水深120メートルにダイバーを送り込む作業は困難を極めそうです」と話す。

安倍氏によると、船体の周辺などの様子を探る撮影ロボットで状況確認して、船体の窓などを切断する作業ロボットを使って船体内部に入り込める状態にすることになりそうだ。

沈んだ物体を引き揚げるサルベージ作業に関しては専門の業者に任せることになる。特殊なスーツを装着したダイバーが沈んだ船にワイヤを取り付け、サルベージ専用の船に積んだクレーンで引き揚げる。

この際のダイバーの作業も海の穏やかな日のうち3~4時間ほどが限界。作業は専門のダイバーが行うが、それでも1回の作業は30分前後に制限されそうだ。

安倍氏は「船体の引き揚げ作業の費用は莫大な資金が必要。その経費は通常であれば船舶保険に入っていれば、保険金での負担になるだろうが、船主の知床遊覧船も資金捻出しなければならないのではないか」と話し「水深100メートルより深い事案なので、いったい何億円になるのか。正直、見当はつきません」と話した。