北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)=19トン」が遭難し、14人が死亡、12人が行方不明となった事故から8日目を迎えた30日、事故で亡くなった東京・葛飾区の加藤七菜子(ななこ)ちゃん(3)の祖父和彦さんが、報道陣を前に悲痛な思いを明かした。

現地対策本部のある斜里町内で言葉を発した。冒頭で「救出していただいた海上保安庁、夜も昼も問わないでやってくださっている漁業関係者のみなさま、医療従事者、斜里町役場、国土交通省の方々、市民の方には献花台にお花やお菓子を添えていただいたり、本当にありがとうございます」と感謝した。

一方で、報道陣の取材活動について思いの丈を述べた。宿泊先へ押しかけてきたり、友人や知人などにも執拗(しつよう)に取材に迫ってくることについて苦言。「なぜ私達をそっとしておいていただけないのでしょうか。みなさんの報道のあり方、モラルに非常に残念です」と声を荒らげながら強い口調で話した。

旅行中に遭った息子一家3人の事故に深い悲しみは消えない。加藤さん一家は函館、洞爺湖、帯広、阿寒などを巡る1週間の北海道旅行中だった。最終目的地の知床で、夫婦の夢だった知床観光クルーズをして、23日夕方に帰京するはずだった。

事故発生翌日の24日に七菜子ちゃんが発見され、28日に父親が発見されたが、母親は今もまだ行方不明のまま。2人の遺体は町内の施設で安置されている。「(七菜子ちゃんと父親は)2人で仲良く(母親の)帰りを待っています。1日でも早く、1日でも早く、私たちの手元に返していただきたい」と涙ぐんだ。