将棋の藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=19)が自身6つ目のタイトル獲得を目指す第70期王座戦挑戦者決定トーナメント(T)1回戦、大橋貴洸(たかひろ)六段(29)戦が6日、大阪市の関西将棋会館で行われ、後手の藤井が大橋に敗れ、同棋戦の敗退が決まった。これで同期の“藤井キラー”に4連敗。22年度の同時に保持するタイトルは6冠が最大となる。

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最終盤、藤井が首を傾け、天井を見つめた。「負けました」。6冠ロードの第1関門でつまずいた。5冠を保持する藤井が全8冠制覇まで残るタイトルは名人、王座、棋王の3つ。タイトルホルダーの藤井は、王座戦の1、2次予選を免除され、挑戦者決定Tから登場した。新たなタイトルを目指す戦いだった。

振り駒で先手となった大橋が戦型を「矢倉」に誘導すると、藤井が受けて立つ。昼食休憩前に前例のない局面になり、両者の指し手はスローダウン。難解な中盤戦、藤井は惜しみなく時間を使った。一直線の攻め合いとなった終盤、藤井は72手目、角取りの金を放って、攻め込む。一時、優勢を築いたが、持ち時間5時間を使い切り、1分将棋に突入。最終盤に逆転され、押し切られた。

終局後、「玉の薄い形で戦いが起こってしまって、自信のない局面が多い将棋になってしまった」。王座戦は2年連続で初戦敗退となった。大橋とは16年10月に四段に昇段した同期。過去の対戦成績は2勝3敗と苦手にしている相手だった。

22年度の同時に保持するタイトルは6冠が最大となる。保持する5タイトルをすべて防衛し、これから本戦が始まる棋王戦で初獲得を目指す。全8冠制覇の期待は膨らむが、道程は過酷だ。記録よりも目の前の対局に全力を尽くす。連覇を目指す叡王戦5番勝負第2局は15日、名古屋で行われる。「内容をしっかり修正していきたい」と前を向いた。【松浦隆司】

◆王座戦と藤井5冠 デビュー1年目は1次、2次予選を突破し、挑戦者決定T準決勝で斎藤慎太郎八段に敗れた。19年、佐々木大地六段に挑戦者決定T初戦で敗退。20年は棋聖と王位のタイトル戦挑戦を目指していた合間で、大橋に2次予選決勝で敗れた。昨年は深浦康市九段に敗れた。勝率8割以上の藤井は王座戦で負けた相手全員に複数回負けている「鬼門」データがある。対大橋の対戦成績は2勝4敗、対斎藤は4勝3敗、対佐々木は2勝2敗、深浦は1勝3敗。