岸田文雄首相は26日、6月10日から訪日外国人観光客の受け入れを条件付きで再開することを発表した。

同1日からビジネス関係者らを対象にした1日当たりの入国者数上限を1万人から2万人に引き上げるなどの水際対策緩和と並行して、その枠内で小規模の添乗員付きパッケージツアー限定で入国を認める。

国土交通省は今月24日から米国、オーストラリア、タイ、シンガポールの4カ国の旅行会社関係者らを対象とした小規模ツアー実証事業を、協力を得た石川県など全国12県で開始。効果的な新型コロナウイルス感染防止対策などを検証し、ガイドラインを再調整していく。

石川県観光戦略推進部国際観光課の北口義一課長は「ずっと低迷していたインバウンドに風穴があけばいい」と外国人観光客の訪日再開を喜んだ。感染状況悪化の懸念に対する国民の不安を払拭していく活動も継続。外国人観光客も東京、大阪など人が多い大都市での滞在を懸念する可能性もあることから「人が多い都市部だけでなく、人口密度の低い地方都市に足を運んでいただき、文化、歴史、魅力を知ってほしい」と願った。

大都市でも外国人観光客復活を歓迎する声が相次いだ。外国人にも人気が高い京都市では、市と観光協会が共同で、すでに「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を作成。コロナ感染予防対策や、これまでの課題となっていた文化や習慣の違いによるマナー違反改善などを呼びかけて準備している。同市産業観光局観光MICE推進室の担当者は「混雑の問題解決に向けては、朝観光や夜観光の時差だったり、秋だけでない季節などで分散観光していただけるような多くの魅力も発信して楽しんでいただければと思っています」と課題克服に尽力していく。

京都市観光協会の調査では、ゴールデンウイークの市内主要ホテル客室稼働率は52.9%で、前年同期間を39.6%も上回った。だが、コロナ前の18年(92.4%)との比較では、まだまだ大きく下回っている現状。外国人観光客不在が大きな理由の1つと分析している。同協会の担当者も「京都駅などには複数の修学旅行生が集合している姿が目立っていますし、国内の旅行客は戻りつつある感覚。外国人受け入れ再開によって宿泊、飲食、関連業種は少しずつ回復してくれれば」。一方で、長期間にわたって外国人対応から離れていたため「インバウンドへの力が落ちているかもしれないので、再度強化していかないと」と受け入れ側の懸念要素も指摘した。

東京・浅草で人力車を運営する「時代屋」加藤隼人さんは「待ちに待っていた。外国人の方は頼みの綱です」。友人と和服姿で浅草寺観光に訪れた20代女性も「私も大学時代の留学生の友人に会えていない。海外の方が日本に来ていただけることは大歓迎。今からTikTokを撮影したい」と文化発信の一翼を担った。【鎌田直秀】