ジャーナリストの伊藤詩織さん(33)が20日、都内で会見を開いた。元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(56)から性的暴行を受けたとして、1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は7日、双方の上告を退ける決定をし、山口氏に約332万円の賠償を命じた。今回の会見は被害に遭ってから7年、裁判を起こして5年を振り返るという趣旨で開かれた。

質疑応答の中で、山口氏に対して伝えたいことは? という質問が出た。伊藤さんは「公で被害を語ることをしてから、自分の中で当事者の観点と、距離を置いてジャーナリストとして2人を作っています。感情としては当事者として伝えたいけれど…」と語った。その上で「感情的な気持ちは、山口氏に対して驚くほどなく、裁判で問いかけたことも、日本の司法裁判で、どういう判決が出るか、ということだった。彼の中の彼なりのコメントとして『違法なこと、犯罪ではない』と繰り返していた。日本では、同意のない性行為は、犯罪ではないかも知れないと大きな声で言える国ということ」と語った。

伊藤さんは、15年4月3日に山口氏と会食した際に意識を失い、ホテルで暴行を受けたと主張し、準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出した。そのことについて、複数のメディアの取材に対して、同6月には山口氏の逮捕状が発行されたが逮捕直前に取り消されたと話し「捜査員から『警視庁幹部の指示』と説明を受けた」と語っている。そのことを踏まえ、当時の警視庁刑事部長だった中村格警察庁長官に対しても、言いたいことはあるか? という質問が出た。

伊藤さんの賠償が確定したことが明らかになった8日には、伊藤さんの事件が発生した際、政権を担っていた安倍晋三元首相が、参院選の遊説が行われていた奈良市内で銃撃を受けて亡くなった。そのことを受けて、中村氏は12日の会見で「重く受け止めている」と、警備などの責任を認める発言をしている。

伊藤さんは、安倍元首相の銃撃について「実際のところ(賠償確定の)話は安倍元首相が撃たれたその日に聞いた。(賠償の確定を)どう受け止めて良いか、分からなかった」と語った。その上で、中村氏に対して、一部には同氏の進退が問われているとの報道があることも踏まえ「中村さんには(警察の)トップに立つ立場として、ここまでいろいろな質問が投げかけられた中で答えを出さない。私の中に気持ち悪いものがある。お話ししてから、辞めて欲しい気持ちがあります」と語った。