W杯カタール大会で奮闘する日本代表26人のうち、6人が来店したことのある町中華が、勝負のスペイン戦に向け、選手たちにエールを送った。

今年で開店35年を迎える「ラーメン信華」(川崎市麻生区)は、J1川崎フロンターレの麻生グラウンドから車で約10分という立地で練習の終わった腹ぺこの川崎Fの選手が多く来店する。森保ジャパンの谷口彰悟(31)、山根視来(28)、守田英正(27)、板倉滉(25)、三笘薫(25)、田中碧(24)も通った選手たちだ。

元々川崎Fの鬼木達監督(48)が現役時代から通い詰めていて、日本代表経験のある我那覇和樹さん(42)や中村憲剛さん(42)も常連だった。2020年から麻生グラウンドに「なるべく外出せずに栄養の満たされる食事を摂取できるように」との理由で食堂が併設された。それからは「来店機会は少なくはなりましたがオフになると足を運んでいただいてますね」と野村俊雄店主(71)は話す。

店名に「ラーメン」と書いてあるが、サッカー関係者のオーダーはほぼ1択で「ナスと豚肉の黒味噌炒め」。縦半分に切ったナスに縦方向に切り込みが入り、柔らかい豚肉と黒味噌で甘辛に炒めたひと皿で、どっさり盛ってあってボリュームも満点だ。

田中店主の妻信子さん(66)は「谷口さんと守田さんはよくおいでいただきました。田中さんは入団したての5年前は週3回ペースでいらっしゃっていて、先輩選手からかわいがられていて、よくおごってもらっていましたね」と話し「でも、みなさん、ラーメンじゃなくて『ナスね』とオーダーされるんですよ」と振り返った。

中にはナスと豚肉の黒味噌炒めの他に、単品でモツ煮込みを注文するパターンも多かったという。カタールはイスラム教国であることから豚肉は食べられず、手に入らない。信華の定食が恋しいころかもしれない。

カタールW杯では6人の顔見知りがメンバーになっているが、野村店主は「やっぱりテレビ放送は気になるし、6人を自然と目で追ってしまう」と笑顔をみせた。信子さんも「いつも陰ながら応援しています。スペイン戦も精一杯力を尽くしていただきたいです」と選手の健闘を祈っていた。【寺沢卓】