宮崎県知事選(25日投開票)は8日告示され、立候補した現職河野俊嗣氏(58)が川南町ふるさと総合文化公園ふれあい広場の畜魂慰霊碑を訪れ、静かに手を合わせた。知事選には前知事の東国原英夫氏(65)、政治団体代表「スーパークレイジー君」(本名・西本誠)氏(36)の無所属計3人が出馬した。

慰霊碑には1時間前、先に東国原氏が訪れていた。そのことについて報道陣から質問されると「あっ、そうですか」とつとめて素っ気ない言葉で返し「あー、一緒のタイミングではなかったんですね」と笑顔をみせる余裕をみせた。

慰霊碑を知事選初日の訪問地として選んだ理由として「口蹄疫からの復興が知事としての私の原点だと思っています」と語り「その原点に立ち返って、そして口蹄疫で影響をうけた命や暮らしを守ること。それが知事の役割であると、それを胸に刻みながらこの17日間をスタートしたい。そういう思いでこの場所を選びました」と述べた。

12年前、口蹄疫の感染が広がったとき、高鍋町の家畜改良事業団にいた県の所管するスーパー種牛5頭を西都市尾八重(おはえ)に移したことを東国原氏は「私の政治判断で逃がした」と話していたが、河野氏は違う見解を述べた。

「種牛を逃がした、と東国原さんが、おっしゃいますが、国に確認をとったうえで畜産の宝、宮崎の宝というよりは国の宝であるという思いの元で県としてギリギリの判断をして逃がしたということになります」と当時を振り返り、念を押すように「私自身も副知事としてそこ(逃がしたこと)について尽力しました」と東国原氏の独断ではなかったことを強調した。

4度目の知事選について「どんな戦いをしたいか」と報道陣から質問が飛んだ。3期を務めてきた自信からかゆっくりと言葉をかみしめるように口を開き「自分の経験、実績、政策をしっかりと県民のみなさまに伝える、ということです」と正面を見据えて語った。

「安定した県政」と評されることについて「裏を返せば『派手さ、面白みがない』『地味だ』との見方のあるが?」との質問が飛んだ。「安定というところに評価をいただいたのは大変ありがたいと思います」と話して「これは安定であって、決して停滞ではないと考えています。安定する中でしっかりと宮崎県の成長をもたらしてきたという思いがございます」と説明した直後、「面白みがない、ハッタリがきかないとかいろいろ言われますが地味で何が悪いんだ。自分としては知事としての役割をはたしてきた実績をこれからも訴えていきたいと考えております」と胸を張った。

東国原氏が知事選に出馬したことについて「いまさら、という言葉に尽きる」突き放すように回答し「12年前の口蹄疫。大変な状況の中で再生・復興。発信力も含めてぜひ(東国原氏の)力を発揮していただきたかった。当時、副知事だった私も切実に感じた。別の考えで1期で退任された。12年間空白があった。なぜ、いまさら戻ってこようとされるのか。私は疑問に思っている」と不満を口にした。

最後に「この選挙は、過去か未来を選ぶ選挙だ」と言い切った。真意は「過去に宮崎の発信をした、アピールをした、その夢を追い求めるだけではなしに、大事なことは未来に向かって進んでいくこと。その未来とはこの3期12年着実に成果をあげてきた私が先頭に立って切り開いていく未来ではないかということを訴えていきたい」と東国原氏を相手に戦う決意を表明した。【寺沢卓】