藤井聡太叡王(竜王・王位・棋王・王将・棋聖=20)が菅井竜也八段(30)の挑戦を受ける、将棋の第8期叡王戦5番勝負第1局が11日、東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で行われる。

タイトル戦14戦目にして、初めて振り飛車党を迎えての頂上対決となる。決戦前日の10日、両対局者は現地入りして成功祈願や検分などの行事をこなした後、会見に応じた。

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名人戦開幕局を6日に制したばかりの藤井が、かけ持ちする叡王戦の防衛戦で初の振り飛車党を迎え撃つ。「鋭い攻めと力強い受けを兼ね備えている。将棋にストイックな方」と、挑戦者を評した。

対局の間隔が詰まった方がいいタイプ。日程的な問題はない。ただ、「これまでの内容とは大きく変わってくると思います。振り飛車の経験の少なさは懸念材料ですが、ここに向けて調整してきたので、感覚をつかんでいければ」と話した。

対振り飛車戦は昨年9月、棋王戦挑戦者決定トーナメントの久保利明九段に勝って以来となる。その1カ月前には、A級順位戦2回戦で菅井の中飛車に完敗した。通算319勝63敗のうち、対振り飛車戦は68勝9敗。9敗中、菅井と久保に最多の各3敗を喫している。

「相居飛車と違い、居飛車対振り飛車では展開が変わってきます。中盤の押し引きの長い将棋が多いので、時間配分も含めて対応できれば」とも語った。

対する本年度初対局の菅井は、「最高の振り飛車」対「最高の居飛車」の戦いと、今回のシリーズを評した。振り飛車党がタイトル戦に登場するのは、2020年(令2)王座戦の久保以来。自身は18年王位戦以来、5年ぶりの大舞台となる。「当時のことは記憶に残っていません。自分の数年間の悔しさをぶつけたいと思っています」。会見では早くも闘志をむき出しにした。

藤井には過去3勝5敗。「自分たちの世代と将棋の作りや感覚が違う。それが強み」と相手を認めながらも、「いい勝負で中~終盤に持ち込むのがテーマ。そうなれば、面白い展開にできるんじゃないかと思っています」。タイトル戦初登場となった17年王位戦で、羽生善治現九段から王位を奪取した。今回は、最強の棋士を相手に振り飛車党の復権がかかる。【赤塚辰浩】

◆振り飛車 将棋の攻撃の柱となる駒、飛車を使った、居飛車と並ぶ戦法の1つ。飛車を中央の5筋に振れば中飛車、左から4番目(先手なら6筋、後手なら4筋)に置けば四間飛車、3番目(先手7筋、後手3筋)なら三間飛車、2番目(先手8筋、後手2筋)なら向かい飛車となる。

【第8期叡王戦5番勝負日程】

◆第1局 4月11日、東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」

◆第2局 4月23日、名古屋市「名古屋東急ホテル」

◆第3局 5月6日、名古屋市「か茂免」

◆第4局 5月28日、岩手県宮古市「浄土ケ浜パークホテル」

◆第5局 6月17日、千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」

 

◆叡王(えいおう)戦 将棋の8大タイトル戦の1つ。タイトル序列は竜王、名人、王位に次いで4番目(以下王座、棋王、王将、棋聖)。主催は不二家。特別協賛・ひふみ、協賛・中部電力、豊田自動織機、豊田通商、日本AMD。2015年(平27)に一般棋戦として第1期を開催。第3期以降、王座戦以来34年ぶりにタイトル戦に昇格した。歴代獲得者は高見泰地、永瀬拓矢、豊島将之、藤井聡太と毎回交代したが、昨年5月に藤井が初防衛を果たした。段位別予選(四・五段各1、六・七段各2、八・九段各3)の突破者と、シードの計16人による勝ち抜き戦で挑戦者を決める。主催の不二家が「糖分補給」のアシストを兼ねて、午前10時と午後3時におやつを両対局者に提供する。