藤井聡太棋聖(竜王・名人・王位・叡王・棋王・王将=20)が佐々木大地七段(28)と1勝1敗で迎えた、将棋の第94期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第3局が3日、静岡県沼津市の「沼津御用邸東附属邸第1学問所」で行われた。午前9時から始まった対局は、午後6時37分、先手の藤井が107手で勝ち、対戦成績を2勝1敗として4連覇と7冠堅持にあと1勝とした。藤井が一気に決めるか、佐々木がタイに追いついて最終局に望みをつなぐか。第4局は18日に新潟市「高志の宿 高島屋」で行われる。

    ◇    ◇    ◇

藤井棋聖がスケールの大きな将棋を見せました。得意とする角換わり腰かけ銀の新境地を開いた1局でしょう。9筋に跳ねた桂は見た瞬間、「? 強引じゃないか」と思いました。ソッポですが、よく考えてみるとここから8筋に飛車を転回させての攻めが成立しています。研究成果と推察しました。

その後は強気の受けで、あえて佐々木七段に桂を7筋に打たせました。厳しい攻めですが、かわしました。「肉を切らせて骨を断つ」。藤井将棋の真骨頂です。

さらに、玉が単騎で8筋まで逃げました。「大丈夫か」と思われるかもしれませんが、この「ぼっち玉」、悠然としていましたし、最後まで安全でしたね。この瞬間、佐々木七段は「歩切れ」。1歩あれば、攻めが成立していました。格言通り「歩のない将棋は負け将棋」。その泣きどころを見越していたと思います。最後は相手の飛車を攻め、ギブアップさせました。

今回は藤井棋聖が一枚上の実力を発揮しましたが、佐々木七段も第2局での勝ちっぷりを見る限り、巻き返しの余地はあります。(加藤一二三・九段)