小型旅客船等の安全対策について、国土交通省(以下「国交省」)、水産庁関係者と公益財団法人日本釣振興会(以下「日釣振」)、日本釣りジャーナリスト協議会(以下「ジャナ協」)、遊漁船事業者などが21日、都内で、意見交換会を行った。

22年4月、知床沖で発生した観光船「KAZU 1」(カズワン)の事故を受け、知床遊覧船事故対策検討委員会で「旅客船の総合的な安全・安心対策」を検討してきたが、「法定無線設備の見直し」「非常用位置等発信装置」「改良型救命いかだ等」が義務化となる方向。

国交省担当者は「全ての船舶における安全性の向上のため」とするが、これまでに8回開催された審議会には、対象として含まれる遊漁船の専門化もしくは関係者がいない。その結果として、遊漁船の実態に沿わない義務化が検討され問題となっている。特に「改良型救命いかだ等」は設置自体や費用など実質的に不可能な問題もあり、日釣振、ジャナ協等は連名で「遊漁船適用除外の要望書」を提出。また、遊漁船関係者は各漁協等を通じて要望書やパブリックコメント等を出していた。

国交省関係者はこれまで「12月月内に公布予定」としてきたが、今回の意見交換会で、「パブリックコメントが300件来ており大きな反響でした。多岐にわたる意見のため現時点でまとめ切れず、発表できるまでに至っていないため、年内の公布を延期させていただきます」とし、「遊漁船からの案で安全を担保できるものがあれば、特例として考えたい。そのために公布を遅らせます」と続けた。

その見直し方について「具体的な方法は水産庁の協力を得ながら」(国交省関係者)としたが、日釣振およびジャナ協関係者は「船の安全面を否定しているわけではないが、遊漁船にとってはあまりにも現実的でなく、周知徹底もされていない。この状況で適用したら釣り文化の喪失にもつながる」と声を大にし、「あくまでも遊漁船を外して欲しい」と改めて要望。遊漁船事業者は「あまりにも実態を分かっていない」とした上で、「救命いかだが義務化されたら、経済的負担から廃業となる船宿も出て来る。そうなると、海が無秩序化する恐れもある」と警鐘を鳴らした。

日釣振、ジャナ協および遊漁船事業者らは「今後の見直し検討の際、人生の透明化」「迅速な周知徹底」「情報の可視化」「経過確認の方法」を求め、国交省関係者は「検討します」とした。