作家の乙武洋匡氏(48)は8日、東京都内で会見し、衆院東京15区補選(4月16日告示、28日投開票)に、無所属で出馬すると正式表明した。

同補選は、昨年の東京都江東区長選をめぐる公選法違反事件で柿沢未途氏(自民党離党)が辞職したのに伴うもの。乙武氏は「政治とカネ」や、国民の政治不信の要因になっている自民党の裏金事件に「憤りを感じている」と述べ、「政治が、助けるべき人々をむしろ苦しめている。政治に希望が失われている今の状況をリセットしたい」と述べた。先天性四肢欠損症である自身の人生を振り返り「みなさんと違う景色を見てきたからこそ、他の人とは違う活動ができる」とも訴えた。

一方で、女性5人との不倫報道で2016年参院選出馬を断念した経緯に触れ「私の人生は大きく変わった。過去は変えられない」とし、あらためて謝罪した。その上で「最近『5股』と書かれている。結婚生活の中で(不倫相手が)5人ということで、5人同時ではない」と、説明に追われる場面も。8年前の女性問題を今も引きずる形となっていることに「選挙で最も卑劣な行為、たとえ選挙で有権者を金で買うようなことをしても、公民権停止は3年や5年で明ける。私は反省しないといけないが、そのことで再チャレンジが許されない、2度と表舞台に出るなというのは…。人生の再起を許さない社会になってしまうのか」などと、複雑な思いも口にした。今後の選挙活動では「隠しもごまかしもしない。それを問われれば『申し訳ありませんでした』と言うのみです」と答えた。

現段階で政党に支援要請はしていないと述べたが、乙武氏は小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が国政進出へ設立した「ファーストの会」副代表に就いており、同会は要請があれば推薦する方針。裏金問題の影響で独自候補の擁立を断念した自民党は支援の形を検討している。一方、連立を組む公明党は8年前の女性問題を懸念して支援に慎重とされ、国民民主党は、自民が推薦するなら支援はしない、としている。

自民、公明、国民各党は昨年12月の出直し江東区長選で、小池氏に近い候補を都民ファーストの会とともに推薦し、「相乗り」する形で勝利した「成功体験」(関係者)がある。今回、乙武氏を全面支援する意向を示している小池氏と各党の連携のあり方が選挙戦の行方のひとつの鍵を握る。

同補選には、立憲民主党の酒井菜摘氏(37)、日本維新の会の金沢結衣氏(33)、参政党の吉川里奈氏(36)、日本保守党の飯山陽氏(48)、無所属の秋元司氏(52)、参院議員で無所属の須藤元気氏(46)、つばさの党の根本良輔氏(29)が立候補を表明。候補者乱立で激戦必至だ。共産党は8日、予定していた小堤東氏の擁立を取り下げ、酒井氏の支援に回ることを発表した。【中山知子】