岸田文雄首相は11日午前(日本時間12日未明)、米連邦議会の上下両院合同会議で英語で演説したが、その際の「すてきな拍手」発言が、「ズレている」(野党関係者)として、波紋を広げている。

首相は演説の冒頭、温かい拍手を受けて「日本の国会では、こんなにすてきな拍手を受けることは、まずありません」と、謝意をまじえて発言した。「つかみ」のジョークのつもりとみられるが、日本の国会では少子化対策や経済政策をはじめ、何より多くの国民が説明を求めている自民党裏金問題でのあまりの説明不足ぶりから、批判を受けているのが実態。そうしたさまざまな環境を理解した上での発言だったのかは、不明だ。

立憲民主党の泉健太代表は12日の会見で、首相の「すてきな拍手」発言を「自業自得だ」と批判。同党の安住淳国対委員長も「政治改革や疑惑追及でリーダーシップを取るなら喜んでスタンディングオベーションを送る」と皮肉った。

「すてきな拍手」はSNSでも批判が相次ぎ、12日、一時インターネットのトレンドワードにもなった。

首相は、ホワイトハウスの公式夕食会でもジョークを連発し、笑いを取った。今回の訪米中は、日本で見せないような笑顔をたびたび見せながら「外交の岸田」をアピールしている。

岸田首相は14日に帰国する予定だが、帰国後は裏金問題の影響で不戦敗2つとなり、残る1つも自民劣勢とされる衆院3補選の告示が控える。支持率も低迷したままで、拍手どころか、首相を待ち受けるのは厳しい政権運営だけ。米国での「すてきな拍手」は首相にとって、「つかの間の夢」で終わりそうだ。