災害対策をめぐり国の新たな「司令塔」的な立場となる防災庁が2日、発足した。内閣直属の新組織で高市早苗首相がトップを務め、実務は、細野豪志復興相が新設された防災相を兼任する。
同庁は、平時から災害被害の抑制策を検討する「事前防災」を国民などに呼びかける。細野氏は2日の閣議後会見の中で、この日、国民や地方公共団体などに対する「緊急要請」を発出する考えを表明。「防災庁は、南海トラフ地震をはじめとした国難級の災害に正面から向き合い、国民を守り抜くという強い気持ちをもって体制を構築する」とした上で、「実際の災害対応を考えた時、防災庁だけではとても対応できない厳しい状況にあることを、しっかりお伝えしていかないといけない」と指摘。各省庁や都道府県の地方自治体に加え、「国民のみなさまにもしっかりを行動をしていただきたい」と述べ「防災庁は国民を守るために全力を尽くす。しかし、万が一、国民のみなさんの中で『防災庁ができるから頼ればいい』とか、いわゆる政府や行政に頼っておけばいいのではないかという気持ちが生じるとすれば、むしろ我が国の防災力をおおきく損ねることになり、それを避けるために国民のみなさんにも要請をさせていただく」と説明した。
緊急要請の内容として、自宅の耐震診断や家具の固定、水や食料、携帯用トイレの備蓄も呼びかけ、「携帯用トイレの備蓄は、まだまだ行き渡っていない」と述べ、「政府も全力を尽くすが、こうした家具の固定や携帯トイレなどは、それぞれのご家庭で用意していただかないと行き届かせることはできず、ぜひお願いしたいと思います」と呼びかけた。
ハザードマップや災害時の避難場所、避難経路の確認、その際の非常持ち出し品の準備も、「あらためて徹底していただきたい」と訴えた。
一方で、国民への「緊急要請」をめぐっては、SNSなどで「すぐに災害が起きるのか」などと、国民の不安をあおるような動きのように受け取られている側面もある。質疑応答で、あらためて国民に「緊急要請」を行う理由を問われた細野氏は、「地震の予知について特別な情報が入っていることはなく、地震以外の有事の情報が入っていることもありません」と言及しながら、「一方で、南海トラフや首都直下地震は極めて高い可能性があることを政治として、お知らせしているのは事実。南海トラフについては30年以内に60%から90%、首都直下も同じ時期に70%という確率がある」と述べ、「30年ということを考えた時、みなさんが生きている間に起きる可能性は極めて高いし、いつ起きてもおかしくない状況だ」と訴えた。
自身が学生時代にボランティアに入った1995年1月の阪神・淡路大震災から、2011年3月の東日本大震災までの間隔は約16年で、来年3月で東日本大震災からも16年を迎えるとし、「人間には『正常性バイアス』があり、大きな災害は起きないのではないか、起きたとしてもそこまで深刻にはならないのではないかと思いがちだが、これは明らかに『バイアス』だ」と主張。「いつ起きるか分からない災害に、それぞれの省庁や自治体、国民にも備えていただくというのは、防災庁としての最大の役割と考えている」と述べ、「もちろん防災庁は全力を尽くすし、そのためにできたが、どうしても『自助』の部分は残る。特に国民のみなさんには、災害を自分事としてとらえていただきたい」として、「緊急要請」への理解を訴えた。

