いま大阪地裁で奇妙な光景が繰り広げられている。不動産大手企業の事件をめぐって無罪となった社長の部下に、机をたたいて「検察なめんなよ」と暴言を吐いて特別公務員暴行陵虐罪に問われ、付審判裁判の法廷に立つ元大阪地検特捜部検事(現・東京高検)の田淵大輔被告(54)。10月20日、「これは犯罪ではないっ」と言い放って最後の被告人質問を終えた。
それと入れ替わるように27日、部下の女性検事に無理に酒を飲ませて官舎に連れ込み、性的暴行をしたとして準強制性交罪に問われた元大阪地検検事正、北川健太郎被告(67)の事実上の初公判が開かれ、被告は起訴事実を否認した。
2024年6月逮捕、10月に第1回公判があったのに、なぜいまが初公判なのか。北川被告は当初、罪を認めたが、その後「あれは組織を守るため。合意なのに女性からあらぬ疑いをかけられた」と否認に転じた。
それから公判前手続きのためなどとして、先日の公判後保釈が決定されるまで延々2年4カ月の拘留。この間、女性検事は高検に第三者委員会の設置などを求めたが、すべて却下され、8月「大好きな仕事でした」と言い残して退職していった。
なぜ凶悪犯罪の公判までに2年余りもの歳月が-。
法曹関係者の間に「未決拘留日数稼ぎ」の声がある。裁判官の裁量で刑期から算入された未決拘留日数を差し引くことができる。北川被告はそれをねらって、少しでも刑務所での服役期間を短くしたい。刑務所に収監されたら、検事に激しい恨みを持っている一般受刑者と同室になる恐れがある。被告は、なんとしてでもそれを避けたかったというのだ。
信じたくない話だが、そこにあるのは、俺たちはなんでも思い通りにできるという検察の傲慢(ごうまん)さと、ないに等しい人権意識ではないか。
罪もない人を脅し、女性の体も心もズタズタにしてなお自分たちは罪から逃れる。それを猛省させるのは裁判所の人権意識しかない。いまそれが問われている。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。東海テレビ「ニュースONE」静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」などに出演中。


