イクイノックスのルメール騎手は、安全策で手堅く勝ちにいった。スタート直後はポジションを取るため促していたが、外の馬が速いのと進みがそれほど良くなかったことで、無理せず後方まで下げた。もちろん馬の力を信じればこそだ。

もし、馬混みに突っ込んでいけば、ごちゃついた1コーナーで何らかの不利を受けたかもしれないし、抜け出す時にもストレスがかかる。天皇賞・秋では上がり32秒7の脚を使った。リズム良く、スムーズに走らせれば、直線は必ず伸びてくれる。この信頼感があるから下げて外を回した。

阪神内回りを考えれば好位で、という思いもあっただろうが、一方で外枠のユニコーンライオン、ドゥラエレーデが積極的に出ていけば流れは速くなる(前半1000メートルは58秒9)という読みも。周りの出方を見ながら、即座にプランAからBに切り替えるあたりは、さすがだ。

仕掛けのタイミングも良かった。3、4コーナーで武豊騎手のジェラルディーナが動いて勝負を懸けてきたが、その“誘い”には乗らずタイミングを計った。ワンテンポ遅らせてゴーサイン。いつもほどの反応はなく少しもたついたが、相手の早仕掛けに惑わされず脚をためたことが、スルーセブンシーズの強襲を、首差退けられた要因だ。

世界ランク1位ほどの馬になれば、少々のロスは底力ではね返せる。怖いのはレース中の不利、アクシデントだ。今回のイクイノックスにとって、1コーナー後方2番手はベストポジションだった。

宝塚記念を制し口取りを行ったイクイノックスをいたわるC・ルメール騎手(撮影・和賀正仁)
宝塚記念を制し口取りを行ったイクイノックスをいたわるC・ルメール騎手(撮影・和賀正仁)