純白の最強ヒロインだ。世界初の白毛G1馬ソダシ(須貝)がデビューから5戦5勝で、史上8頭目の無敗制覇を果たした。

好位から押し切り、古馬を含めたコースレコードを0秒8も更新する1分31秒1の驚異的なタイムを記録。白毛馬としてクラシック初出走で初制覇を飾った。また、鞍上・吉田隼人騎手(37)は18年目でうれしいクラシック初制覇となった。

   ◇   ◇   ◇

青い空と緑のターフに、純白の馬体が映える。誰よりも目を引く女王ソダシが、ラスト200メートル手前で先頭へ躍り出た。黄、黒、青の勝負服が、白い手綱をしごく。迫るライバルの脚音。「我慢してくれっ!」。鞍上の願いに応えて両耳を絞り、桜色の鼻が真っ先にゴールを駆け抜けた。タイムは1分31秒1。掲示板に赤く「レコード」の文字が映し出された。

吉田隼騎手 最高に気持ちいいです。周りからも「話題性だけで本当に強いのか」とみられていたし、見返してやろうと。(好位で)じっと我慢してくれてたし、馬を信じてスパートした。すごいことをやったなと思います。気難しいところがあるけど、今日は気持ち良く走ってくれました。

愛らしい見た目と裏腹に“女王様気質”を併せ持つ。調教でも機嫌を損ねればごねる。前走では枠入りを嫌がった。だから主戦として調教から寄り添って信頼を深め、課題のゲートインもクリアした。美浦所属ながら18年秋に「後悔したくない」と拠点を栗東へ移し、待望のクラシック初V。「頑張っていれば、いい馬にめぐり会える。諦めずにやってきてよかった」。マスクの下で頬を緩めた。

もはや、みんなのアイドルだ。厩舎には宛名「ソダシ様」でファンレターやお守りが次々と届く。時に「今浪隆利様」宛ての手紙も来るという。「幸せなことやね」。阪神JFの後に母を亡くした今浪厩務員にとっても心の励みになった。

須貝師 桜の花は散ったけど、ターフに真っ白なお花を咲かすことができた。コロナ禍のこういう状況で、少しでも明るいニュースを届けられてよかった。

白星続きの快進撃は止まらない。牡馬クラシックにも登録があり次戦は未定だが、2年連続の無敗3冠牝馬誕生への期待も高まる。黒星知らずの無垢(むく)なヒロイン。これからも競馬史を真っ白に塗り替えていく。【太田尚樹】

◆ソダシ▽父 クロフネ▽母 ブチコ(キングカメハメハ)▽牝3▽馬主 金子真人ホールディングス(株)▽調教師 須貝尚介(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 5戦5勝▽総収得賞金 2億6623万2000円▽主な勝ち鞍 20年札幌2歳S(G3)アルテミスS(G3)阪神JF(G1)▽馬名の由来 純粋、輝き(サンスクリット)