絶対王者オジュウチョウサン(牡11、和田正)に主戦ジョッキー、石神深一騎手(39)の存在は欠かせない。「石神さん、お願いします」「シンちゃん、よろしく」「シン、頼んだぞ」「石神ならなんとかしてくれる」。和田正師、長沼厩務員、青山助手など厩舎スタッフが全幅の信頼を寄せ、ストイックに競馬と向き合う彼の姿勢を評価している。
JRAのホームページに掲載されている石神騎手の公称体重は46キロ。ベストなパフォーマンスを発揮できるこの体重をアドバンテージだと感じることもあれば、マイナスに感じることもある。まだG1を勝つ以前「自分の軽すぎる体重が馬を御す上で不利なのではないか」。そう悩んでいた時、先輩の高田騎手に言われたことがある。「そんなことを心配する必要はないよ。乗っている人間が重いより、乗っている人間が軽い方が馬は走りやすいに決まってるじゃないか」。その一言で気持ちが楽になったという。無理に筋肉をつけたり、食べたりして、自らの体重を増やす必要性を感じることはなくなり、騎乗技術を磨くことに専念するきっかけになった。
「でも、僕が軽い分、(負担重量に合わせて)鞍が重くなっているのは間違いないです。僕が乗る馬は他の人が乗る馬より重い鞍を(レース前の)装鞍所からレースまでずっと背負っていることになる。だから、レースではどれだけ馬に負担を掛けずに乗ることができるのか、それを考えてます。まずは体を柔らかくすることで、馬と一体になって走れるように…。手の指や足の指の1本1本まで意識してます。どこまでも柔らかくすれば、それで馬が走りやすくなるかもしれない。そう思ってトレーニングしてます」。もっとうまくなりたい。その一心。もちろん、オジュウチョウサンとの出会いでその思いは加速を続けている。
石神騎手の口からはたくさんの先輩騎手の名前が出てくる、尊敬の思いがこもった口調で。現役の騎手だけでなく、往年の名騎手たちもそうだ。「ライバルなので『尊敬している』とは言いたくないんですけどね。高田先輩は馬術選手のアドバイスで取り入れた騎乗姿勢とか、新しい情報を動画で送ってきてくれるんです。すごく刺激を受けています。だから僕も後輩には聞かれたことはすべて答えて、教えるようにしてます」。
大レースが迫れば、重圧がかかる記録のことを記者から聞かれることもある。そんな時「記録も競馬の魅力だと思ってます。新記録を狙っていきますよ」とサラッと言ってのける。ジョッキーという職業へ真剣に取り組んでいるからこそ、高い理想も口にできるのだ。追い求める究極の騎乗とは…。「(障害競走で)2馬身差なら僕の騎乗でなんとかできるようにしたい」。オジュウチョウサンの主戦、石神深一騎手はセリフが男前すぎるといつも思っている。【木南友輔】

