名ステイヤーの誕生だ! 福永祐一騎手(44)が騎乗した3番人気のワールドプレミア(牡5、友道)が、19年菊花賞以来の勝利で春の盾を手にした。鞍上は18度目の挑戦で念願の天皇賞・春初勝利。史上4人目のJRA重賞150勝を達成するとともに、76年にエリモジョージで制した父洋一元騎手との親子制覇も果たした。馬は放牧を挟み、次走が検討される。

漆黒の馬体を弾ませながら、ワールドプレミアが仁川のターフを疾走した。直線の上り坂を2回駆け上がる阪神芝3200メートルにふさわしい消耗戦。1000メートル通過59秒8という速い流れを中団で追走し、直線で馬場の真ん中に導かれると、鞍上のアクションに応えるように力強く伸びた。

「非常に強かったです。最後はみんなの脚があがった中で、よく抜けてきてくれた。馬の頑張りをほめてあげたい」

福永騎手は死力を尽くした相棒をたたえた。

例年とは違う、阪神での大一番で初コンビ。加えて「スタートを決めていいポジションを」という戦前のプランが崩れ、想定外の競馬になった。しかし、名手に焦りはなかった。

「調教にまたがって特性はつかんでいたし、それを生かせればと思っていた。スタートは決まらなかったけど、内枠ですぐリカバリーできたし、スタート後はすぐ切り替えて、馬のリズム最優先で運んだ」

コントレイルで無敗の3冠ジョッキーとなった昨年、騎手として新たな境地に達した。「馬にまたがってコンタクトをとることで、これまでの経験から、より馬のことが分かるようになった」。その感覚通りに、今回はワールドプレミアを理解し、ポテンシャルを最大限に生かす好騎乗。応えて3200メートルを走りきった馬も見事。まさに“人馬一体”の勝利だった。

一昨年の菊花賞以来、2つ目のG1タイトルを奪取し、今後は長距離王として次なる強豪を迎え撃つ。次走について友道師は「オーナーと相談して決めます」としながら「まだまだこれから良くなってきそうです」と将来にさらなる期待を寄せた。新たに誕生した“名ステイヤー”の挑戦は始まったばかりだ。【藤本真育】

◆ワールドプレミア▽父 ディープインパクト▽母 マンデラ(アカテナンゴ)▽牡5▽馬主 大塚亮一▽調教師 友道康夫(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 11戦4勝▽総収得賞金 4億5594万3000円▽主な勝ち鞍 19年菊花賞(G1)▽馬名の由来 世界規模での上映会を目指して

<天皇賞・春アラカルト>

☆父子制覇 ワールドプレミアの父ディープインパクトは06年に制しており、19年から3年連続での親子制覇となった。

☆馬主・大塚亮一氏 初出走で初勝利。JRA・G1は19年菊花賞を同馬で制して以来、今年初勝利で通算2勝目。JRA重賞も19年菊花賞を同馬で制して以来、今年初勝利で通算3勝目。

☆生産牧場・ノーザンファーム 18年レインボーラインから4年連続通算6勝目。JRA・G1は今年の皐月賞(エフフォーリア)に続く、今年4勝目で通算163勝目(他にJ・G1を3勝)。JRA重賞は1日の青葉賞(G2)をワンダフルタウンで制したのに続く、今年29勝目で通算691勝目。

☆関西馬の勝利 18年レインボーライン以来、3年ぶり36回目。通算では関東馬46勝、関西馬36勝。

☆5歳馬の勝利 昨年のフィエールマンに続き、2年連続26回目。これで各世代の勝利は4歳馬49勝、5歳馬26勝、6歳馬7勝、7歳以上馬は0勝。

☆3番人気の勝利 08年アドマイヤジュピタ以来13年ぶり7回目。

☆馬番1番の勝利 16年キタサンブラック以来、5年ぶり10回目。

(2021年5月3日付 日刊スポーツ紙面より)