え~っ、100円が2000万円超に!! JRA・G1史上最高となる高額払戻金が飛び出した。17日に東京競馬場で行われたヴィクトリアマイル(芝1600メートル、出走18頭)で、3連単が2070万5810円。G1では従来の記録1098万2020円(08年秋華賞=3連単)の倍近い額。最低18番人気ミナレット(牝5、大和田)がハイペースの逃げから3着に粘り、波乱を演出した。G1高額配当の上位5傑中、牝馬限定戦が何と4つ。今週のオークス(G1、芝2400メートル、24日=東京)はいかに!?

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第4コーナーから最後の直線入り口で、波乱の前兆はあった。逃げたミナレット、追う12番人気ケイアイエレガントの2頭が止まらない。絶対の1番人気ヌーヴォレコルトなど、人気馬の姿も見えない。府中がざわつく。ゴール前、先行2頭の脚はさすがにあがり、強襲したストレイトガールが女王の座をもぎとった。ざわつきは、まだおさまらない。やがてテニスコート3つ分の大きなモニターに、G1史上最高配当を意味する「3連単 2070万5810円」の文字が映された。的中は196票。55億を超える3連単の売り上げ中、的中はほんの一握りしかいない。5万観衆が、この日一番のどよめきを上げた。

メガトン級決着の立役者となった先行2頭だが、演出したのは最低18番人気のミナレットだ。大外18番枠から好スタートを決めると、江田照騎手はすぐさま手綱を強くしごき、問答無用でハナを主張した。「ためて脚をつかう馬じゃない。行こうと決めていた」(同騎手)。マイル戦ながら、2番手とは5馬身ほども差をつけた、覚悟のハイペース。いずれ失速するだろうと、他馬の油断を誘った。「ノーマークになったのも大きい。自分のレースで頑張ってくれました」と鞍上はしたり顔で、激走のパートナーをねぎらった。

またミナレットが嵐を呼んだ。JRA全競走の3連単でも史上2位という配当。同1位(2983万2950円)は、12年8月4日新潟の新馬戦。1着でゴールを駆け抜けた14番人気馬(出走17頭)こそ、当時2歳のミナレットだった。史上最高のデビューを飾った同馬が、初の大舞台で歴史の再現を果たした。

目を丸くしたのは、ファンだけではない。レース後の勝利騎手インタビュー。配当を伝え聞いた戸崎騎手は「に、2000万ですか?」。1着の騎手がもらえる賞金(450万)の4倍以上にあたる額に、思わず目を見開いた。「やれるという思いはあったけど、僕の馬も人気を落としていましたからね。馬券を取られた方は、おめでとうございます」。馬を信じた名手ですら、信じられない結末だった。【柏山自夢】

(2015年5月18日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時