フランスのレジェンドジョッキー、オリビエ・ペリエ騎手(51)が、現地25日のラテスト競馬場で2鞍の騎乗を終え、現役を引退した。

94年の初来日から毎年のように短期免許を取得し、日本の競馬ファンにもおなじみの存在だった。伊嶋健一郎記者が取材ノートで振り返る。

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ペリエ騎手は06年から約3年にわたって、来日した時は日刊スポーツに「ペリエで勝つ」というコラムを掲載していた。もちろん、通訳さんを介してだが、毎週のコラムを担当させていただいた。

ペリエ騎手がいつも口にしていたのは、日本競馬へのリスペクト。日本の競馬が好きで、レベルが高いことを当時からヨーロッパの関係者にも伝えていた。また、「1鞍1鞍を大事に乗ります」がいつも締めくくりの言葉だった。

特に印象的だったのは、日本の競馬場、コースを研究し、熟知されていたこと。騎乗馬や相手の馬のことはもちろん、舞台について知ることが、勝てる騎手の要素なのだろうと学んだ。

たとえば、有馬記念の舞台となる中山芝2500メートル。02~04年には3連覇を果たしている。

「中山の2500メートル戦は小回りで、ある程度いい位置にいないと難しい。ボクが勝った3回の位置取りを見てもらえばわかると思いますが、3回とも好位か逃げ馬の後ろでした。もちろん、外枠は外に振られる分、位置取りが難しくなります。スタートしてすぐにコーナーに入りますからね」

また、00、01年と連覇したフェブラリーSの舞台、東京ダート1600メートルには「作戦的なことはシークレットですが(笑い)、東京ダートコースの直線は“長いようで長くない”。早めに出て…というところでしょうか」と教えてくれた。

さらには、京都芝2400メートルのことは、あのヨーロッパの大レースの舞台と重ね合わせていた。

「大好きな京都芝2400メートル。ボクは“ミニ・ロンシャン”と呼んでいるんですよ。なぜか? それは凱旋門賞が行われるロンシャン競馬場の芝2400メートルコースと、すごく似ているからなんです。フォルスストレート(偽りの直線)こそないですが、バックストレッチが長く、3コーナーで坂を上って下るという形状もソックリ。何百回と経験しているロンシャンを思い出して乗りますよ」

ある時は、日本の中学生からフランス語で書かれたファンレターが届き、大喜びしていた。僕もそうだが、日本の競馬ファンもペリエ騎手を愛していた。現役引退は残念だが、世界の名手からいただいた金言は、いつまでもノートと心にとどめておきたい。【中央競馬デスク=伊嶋健一郎】