3歳世代の頂点を決めるダービー(G1、芝2400メートル)は、29日に東京競馬場で行われる。

トライアルの青葉賞を制したプラダリア(牡3)が、勢いに乗って大物食いを狙う。生産者、オリエント牧場では、かつて00年ダービー4着、菊花賞では首差2着に惜敗したトーホウシデンを送り出しているが、今回はそれ以上の手応えだ。中川信幸代表(73)は「独特の夢舞台。勝つのが難しいのは身をもって知っているが、いい競馬をしてほしい」と願いを込める。

今年1月デビューでメンバー中最も遅い使いだしとなったが、3戦目の未勝利を7馬身差で圧勝。続くダービーと同じ施行条件の前走を連勝で制し重賞初V。一気に世代の頂点を極めるビッグステージへとのし上がってきた。実質的な2代目にあたる譲専務(46)は「相手も強くなるのでどうかと思いましたが、終わってみれば強かった。生まれた時からバランスが良く、芯の強さを感じていた。距離とコース経験の強みを生かして頑張ってほしい」とエールを送る。

プラダリアの母シャッセロールは、中央短距離を3勝し、繁殖牝馬として牧場に戻ってきた。「スピードがあった。母系は96年オークス3着リトルオードリーにさかのぼる血統だからね。高額のディープインパクトを配合しているように、オーナー(名古屋友豊)もこの血脈から大物を、という思い入れが深かった」と説明する。

牧場は69年開業で通称サラブレッド銀座に位置する。今回でダービー出走は18年テーオーエナジーに続き4頭目になる。新冠町町議会議員も務める同代表は「ここ数年で何軒もの仲間が後継者不足などで辞めてしまった。それだけこの生産界は難しい。そんな中でうちのような小さな牧場から4頭も出るのは奇跡だよね。青葉賞組が勝てないのは、たまたまそういう巡り合わせだったと思いたい」。老舗牧場がジンクスを打ち破り、ダービーの歴史を変えるかもしれない。

【奥村晶治】

◆J・G1・9勝オジュウチョウサン(牡11)の生産者でも知られる坂東牧場(北海道日高町)は、育成・トレーニング事業も盛んに行われている。プラダリアは1歳秋に同施設に移動し、馴致(じゅんち)から手掛けてきた。

坂東正積代表は「入厩当初はきゃしゃでしたが体幹が強く、芯がしっかりしていた。乗り味は抜群で動かせば、いくらでも動いてしまうので、とにかくゆっくり、ゆっくり進めました。こういう馬がG1に出るのだろうなという見本のような馬でした」と振り返る。

同施設では、武幸四郎師の管理馬で兄武豊騎手が騎乗して桜花賞2着だったウォーターナビレラ(牝3)も在厩していた。「今年は『兄弟』に縁があるようです。桜花賞は本当に惜しかった。その分まで池添兄弟&プラダリアには頑張ってほしいので現地で応援します」と力が入っていた。