薄灰色の馬体が母の思い出を呼び起こす。メイショウベルーガが残した最後の子、メイショウネムノキ(牝2、池添兼、父ロードカナロア)が函館競馬場で調整を重ねている。池添兼師は「先週の日曜に15-15くらいの調教をやりました。まだ幼いからね。用心しながらやってますよ」と先を見据える。同馬は母の6番子。初子のメイショウジーター(6戦0勝)以外は全て母と同じ芦毛馬として、この世に生を受けた。

少しずつデビューに向けて歩みを進めている。7月1日にゲート試験を受ける予定。デビュー時期も次開催の札幌を見込んでいる程度で方向性は定まっていないが、光るものは感じている。池添兼師は「体は今まで生まれてきた馬の中では一番。最後の子どもだからね。最初は気性的にてこずることもあったけど、こっちにきたらすごく順調ですよ」とにこやかに話す。

母には息子の謙一騎手を主戦として起用してきた。10年エリザベス女王杯では英国馬スノーフェアリーの2着。右前繋靱帯(じんたい)不全断裂で競走中止、引退となった11年天皇賞・秋出走までに重賞2勝を挙げた。その子どももメイショウテンゲンが19年弥生賞を、メイショウミモザ(鞍上は鮫島駿騎手)が今春の阪神牝馬Sを制している。ベルーガは21年8月に16歳の若さで死んでしまったが、次なる世代の馬たちが厩舎を支えてきた。

来年2月に定年を迎える池添兼師にとって、楽しみが広がる1頭だ。「どうにか頑張ってもらいたい。まずはゲート試験に受かってからだけど、使うなら芝の1800メートルくらいになるのかな。私も期待していますよ」。最後の子と最後に大仕事を-。大舞台を目指して着実に馬を育てていくつもりだ。